研究実績の概要 |
本研究は、下方リスク評価基準の中でも金融実務における関心の高い期待ショートフォールに着目して、時間非整合な確率制御におけるPre-commitment アプローチに基づく最適制御の数値解析アルゴリズムを構築するものである。当初の研究計画では研究の第一段階として凸共役変数を伴ったHamilton-Jacobi-Bellman-Issac方程式(HJBI方程式)による解の特徴づけを採用する予定であった。しかし、その根拠となる論文 Veraguas et. al. [SIAM Journal on Financial Mathematics, Vol.13, Iss.3 (2022)] を精査したところ、本研究のポートフォリオ最適化モデルについては、当該論文によるHJBI方程式への帰着は適用範囲外であることが判明した。適用可能になるような理論拡張を探求する方向も検討したが、本研究のゴールは具体的な投資戦略の提供であることを鑑みると、数値解析の探求以外に研究リソースを投入することは目標達成にそぐわないと判断した。そこで、一旦この方向性での研究は休止して、第二段階で実施予定であった論文 Miller and Yang [SIAM Journal on Control and Optimization, Vol.55, Iss.2 (2017)] で提案されたリスク水準最適化と戦略最適化の2段階最適化アプローチを採用した最適戦略の数値解析技術の探求に着手し、数値解析プログラムを実装中である。
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