評価困難な積分によって表現される、統計量の確率密度関数にはいくつかの有効な評価方法が存在する。特に線形判別分析をベイズ統計学の観点から考察した場合、ある統計量の確率密度関数の評価が変数選択のためには不可欠である。ここで線形判別分析とは1次関数の値によって、ある人が特定の疾患かどうか、出土した古文書がどの作者のものなのか、投資先の企業が倒産するかどうか、などをいくつかの変数の情報をもとに判断する多変量統計解析の代表的な手法である。ここで、重要な問題はどのような変数をその判断を行う上で組み込むかである。このような判断を行う上で、1次関数の傾きと切片の値を評価することが必要なのだが、データを取り直すごとにこれらの傾きと切片の値は変動するため、その変動の仕方を特定する必要がある。このような変動は通常、確率密度関数によって記述されるのだが、その評価のためには評価の難しい積分の値を計算する必要がある。本研究においては、その積分計算のために1950年代ごろに導入されたある多項式(zonal多項式)を用いることが有効ではないかというアイデアに基づいている。この多項式(zonal多項式)に関する文献は非常に多く、当該年度はこの多項式に関する文献調査を綿密に行った上で、非常に特別な場合に限って、理論的に積分評価が可能であるような結果を得ることができた。また、当該年度に開催された学会において、関連する研究分野の発表を聴講し、本研究に関する実データへの応用に関する知見を得ることができた。
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