研究課題/領域番号 |
23K16846
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
笠島 めぐみ 国際医療福祉大学, 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部, 助教 (20974471)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | マイクロシミュレーション / 将来推計 / 少子高齢化 / 社会保障制度 / 社会健康格差 |
研究実績の概要 |
本研究では、急速に進む少子高齢化の状況下で、拡大していく可能性がある社会健康格差を動的に予測し、公正かつ包括的な社会保障支援を提言するためのマイクロシミュレーションの開発を行う。具体的には、将来高齢者となる現役世代の経済的要素、婚姻状況、健康状態を相互作用させ、現役世代から死亡するまで、生涯に渡る健康と社会経済状況を記述するマイクロシミュレーションモデルを構築する。本研究の役割は、これまで開発してきた高齢者の健康と社会保障需要を予測するモデル(Kasajima, et al.)の対象年齢層を若年層にまで拡張し、社会経済変数を増強することで、さらに現実に即した社会保障モデルに発展させ、社会保障を支える側と受ける側の双方を含む政策シミュレーションツールを創出することである。社会健康格差の拡大により格差の影響を受ける層の属性と健康状態を明らかにすることで、医療介護負担の偏りを考慮した社会福祉支援に備えることができる。既存の健康変遷マイクロシミュレーションに経済・婚姻状況を組み込むことは、異なる政府統計を確率的に結合させてライフコースを描く新たな試みであるため、これまでの手法に新しいアルゴリズムを導入する必要がある。初年度は先行研究やプロトコールを調査・入手し、理論的な方針を固めた。また、効率的にシミュレーションを実行するため、Python言語へプログラムコードの書き換えを進めた。さらに、国際学会で他国の健康変遷シミュレーションモデル開発者と意見交換をする機会が得られ、予測モデルの妥当性検証について議論を交わすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、本研究遂行のための新たな知識と技術を獲得し、シミュレーション構築の理論的側面を進めることができた。日本の世帯情報解析モデル(INAHSIM)の先駆者である国際医療福祉大学の稲垣誠一教授より最新のグローバルプロトコールに関する情報が得られたことは本研究にとって極めて価値がある。初年度に、国際学会でイギリスと中国のシミュレーションモデル開発者と意見交換する機会が得られ、異なるアルゴリズムによる予測の強みと弱みについて深い理解が得られた。政府統計の利用申請に向け、必要なデータソースと変数の精査を行い、準備を整えた。研究計画では国際学会の参加は2年目に予定していたが、国際的なネットワークの拡大のために代え難い経験と捉え、1年目に予定していたシミュレーション用機材の予算執行を次年度に繰越すことで資金配分を調整した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は政府統計の個票申請を行い、実データを用いてシミュレーションの実装に着手する。入手可能となった政府統計データより順次解析を進め、公表されている政府統計の集計値や異なるデータソースの統計と整合性を確認した上で、シミュレーションに必要な移行確率計算に取り掛かる。同時に、初年度より繰り越した予算を活用し、シミュレーションに必要な機材を手配し、シミュレーション環境を整備する。三年目に本研究のシミュレーション開発の成果を国際学会で発表できるよう、次年度中にベースラインシミュレーションの実行と妥当性の検証を行うことを目指す。国際学会でのフィードバックを受け、論文を執筆し、最終年度の論文掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に、国際学会でイギリスと中国のシミュレーションモデル開発者と意見交換する機会が得られ、国際的なネットワークの拡大のために代え難い経験と捉え、1年目に予定していたシミュレーション用機材の予算執行を次年度に繰越すことで資金配分を調整した。次年度は、初年度より繰り越した予算を活用し、シミュレーションに必要な機材を手配し、シミュレーション環境を整備する。
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