研究課題/領域番号 |
23K16854
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山下 直人 関西大学, 社会学部, 准教授 (20964703)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 単純構造 / 多変量解析 / 因子分析 / 構造方程式モデリング / 交互最小二乗法 |
研究実績の概要 |
本研究課題である,パラメータ行列の単純構造化を達成するための方法として,本年度は,パラメータ行列の回転法に関する研究を中心に行った. まず,パラメータ行列の新たな回転アルゴリズムを開発した.提案アルゴリズムは,2段階の計算ロジックによってパラメータ行列の単純構造化を目指す点でユニークであり,提案アルゴリズムが既存のアルゴリズムを上回る性能を有することを数値的に確認した. また,パラメータ行列の回転法を利用した,新たな多変量解析法を2つ開発した.一つ目は,冗長性分析の拡張として知られる,拡張冗長性分析に関する方法である.拡張冗長性分析は,分析対象とする変数のグループ構造に対する情報を必要とするが,そのような事前情報が利用できない場合が多く存在する.提案法は,この問題を,パラメータ行列の単純構造化によって,変数のグループ構造を自動的に検知することによって解決した.二つ目は,Generalized Structured Component Analysis (GSCA)と呼ばれる構造方程式モデリングに関するアルゴリズムにおける回転の導入である.GSCAでは,様々な因果構造を含むモデルを検討できる一方,十分に信頼できるモデルを着想することが難しいという問題が知られている.提案法では,パラメータ行列の回転によって,このモデル探索を容易にすることを目指すものであり,提案法により,先行研究よりも優れたモデルに到達できることが示された. これらの研究に関する成果として,Psychometrikaをはじめとした国際誌への論文投稿および採択3件,DSSV2023などの国際学会での発表3件を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パラメータ行列の単純構造化に関する研究では,回転アルゴリズム自体の開発と,回転を応用した多変量解析法の開発といった2つのアプローチで研究が進展しており,トップジャーナルへの論文採択という具体的な成果を出せている.また,本研究と並行して,新たな計算原理に基づく構造方程式モデリングを構想しており,この方法は,パラメータ行列の回転やスパース推定などの,様々な研究の展開が期待できるものである.これらの点から,本研究が,計画以上に順調に進展しているものと考えた.
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今後の研究の推進方策 |
前述の新たな構造方程式モデリングに関する研究成果を論文化し,その理論的な着想および性質に関する学術的価値を明確なものとする.その上で,数値実験と理論的検討を通した,他手法との経験的・理論的比較を行った上で,パラメータ行列の回転アルゴリズムとの組み合わせ,スパース推定などの研究に展開することを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
出版予定の書籍の出版が遅延したため,繰越金が生じた.出版後の購入を計画している.
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