研究課題/領域番号 |
23K16873
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
PAN ZHENNI 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (40713368)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 知的反射面 / ビームフォーミング協調制御 / チャンネル情報推定 / ワイヤレス給電 / エネルギー効率 / 自立可能 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、高移動性による複雑な電波伝搬環境などの課題に直面する次世代モバイル通信システムにおいて、知能反射面(IRS)を導入し、反射素子グループの自律制御方式を検討することで、マルチモバイルユーザーに適応可能なデータと電力の効率的な同時伝送を実現する手法を提案し、その有効性を明らかにするものである。 本年度は、ユーザーの高移動性による変化するチャンネル情報を推定し、IRSからユーザーへの最適な反射角度を制御するビームフォーミング方式を工夫した。特に、ワイヤレス給電による自立可能なIRSの開発を目指すため、IRSーユーザー間と基地局ーIRS間のチャンネル情報を網羅的に考慮し、基地局側のアクティブビームフォーミングとIRS側のパッシブビームフォーミングを統合した手法を提案し、通信品質の改善とともにエネルギー伝送効率とスペクトル効率の関係を検証した。 また、高いモビリティ性を持つユーザーへの反射角度の調整がより困難になるため、遅延・ドップラー領域で情報シンボルの多重化による高速移動体通信の環境に適したOTFS通信方式直交時間周波数空間(OTFS)通信方式を用いたIRSシステムにおけるチャンネル情報の推定手法を提案した。具体的には、OTFSのパイロット信号を通して測定された時間-周波数ドメインでのチャネル情報を信号パラメーターの2次元推定手法で区別することにより、ユーザーの速度をリアルタイムで把握することができ、ユーザーへの反射角度推定の精度向上にも役立つことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、本研究課題の基盤であるチャネル情報を推定することができており、推定されたチャンネル情報を用いたIRSのビームフォーミング協調制御手法を提案した上、エネルギー伝送効率とスペクトル効率の関係の評価を行った、成果の一部がIEEEの主要な国際会議で発表された。また、高いモビリティ性を持つユーザーに向けて、OTFS通信方式を用いたビームフォーミングも検討しており、ユーザーの速度推定による反射角度制御の精度向上に効果があることを明らかにした。今後の研究推進に対して、有益な手掛かりである。関連成果をまとめ出来次第、直近の国際会議への投稿を予定している。上記のため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本年度の研究進捗を踏まえ、下記の項目について研究を進める予定である。 1. OTFS方式を導入したIRSシステムにおいて、モバイルユーザーの位置推定手法を検討し、ビームフォーミングの精度向上を図る。 2. 自立可能なIRSにおける電力伝送の実現を目指し、反射素子の数量や構成がIRSの反射特性や給電効率に与える影響を精査する。さらに、通信品質とワイヤレス給電の両立が可能な反射素子のグルーピング制御手法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
反射面素子の制御方式を検証するために必要なシミュレーターと実験環境を工夫したため、一部の機材の購入支出が次年度使用額として予定している。国際会議投稿に関わる参加費などはオンライン発表のため、予定額よりも少なくなった。
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