研究課題/領域番号 |
23K16881
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 恭佑 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (90935743)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゼロ知識証明 / ブラックボックス帰着 / 暗号理論 |
研究実績の概要 |
非対話ゼロ知識証明(Non-Interactive Zero-Knowledge proof system, NIZK)とは,ある秘密の情報を知っていることを,その情報を明らかにすることなく他者に納得させるための暗号技術である.どのような情報に対して証明ができるかはNIZKの構成によって異なるため,あるNIZKによって証明される問題(言語)を拡張できるかどうかを検討するのは重要な課題である. 2023年度はNIZKの一種であるNon-Interactive Zero-Knowledge Proof of Knowledge(NIZKPoK)の言語拡張可能性について検討した.通常のNIZKを等式言語NIZKに一般に拡張することができないのは既に知られている.しかしNIZKPoKはNIZKよりも高性能な技術であるため,NIZKではできないことがNIZKPoKで可能であることは十分に考えられる.そこで,NIZKPoKから等式言語NIZKが一般に構成可能であるかを調べ,そのような構成が(ブラックボックス的に)不可能であることを数学的に証明した.等式言語NIZKという重要なアプリケーションがNIZKPoKという強力なビルディングブロックからでも一般には構成できないという知見は,今後のNIZKの研究に対して大きな示唆を与えるものである. 本成果に関して既に論文の執筆は完了しており,暗号理論のトップジャーナルであるDesigns, Codes and Cryptographyに現在投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常の非対話ゼロ知識証明から等式言語やOR言語への拡張が一般に不可能であることは既知であり,本研究課題ではさらに発展的な非対話ゼロ知識証明を用いた場合や,先述の言語以外への拡張可能性を検討するものである.2023年度はNon-Interactive Zero-Knowledge Proof of Knowledge(NIZKPoK)という非対話ゼロ知識証明より高性能な暗号技術の等式言語への拡張可能性を検討し,そのような拡張が一般に不可能であることを数学的に証明した.本成果は現在暗号理論のトップジャーナルであるDesigns, Codes and Cryptographyに投稿中である.発展的な非対話ゼロ知識証明を用いた場合の言語拡張可能性を検討するという当初の計画通りの研究内容であり,既に論文をジャーナル投稿していることも加味して研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
既存の等式言語NIZK拡張への取り組みは,2023年度の成果も含めて全て公開鍵暗号の暗号文に対する証明をするNIZKからの言語拡張可能性を考えたものである.しかし公開鍵暗号以外に対するNIZKも存在するため,それらのNIZKから等式言語NIZKへの拡張を検討するのは重要な課題である. また近年二つの暗号文の中に隠されたメッセージが同じであるかどうかを明らかにできる特殊な公開鍵暗号が提案された.つまりこの公開鍵暗号は,等式言語NIZKとほぼ同等のことができることを意味する.このような公開鍵暗号とそれに対するNIZKが与えられた時に,等式言語以外のOR言語などに対するNIZKが一般に構成可能かを検討するのも興味深い研究課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果としてはジャーナル投稿のみであり,国際会議への参加などがなかった.また物品に関しても近々で購入する必要がなかったため,結果として差額が出てしまった. 2024年度はジャーナル投稿(30万円),物品購入(80万円),国内外への出張(110万円)などを予定しているため,問題なく予算消化する予定である.
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