研究課題/領域番号 |
23K16981
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
徐 キョウ哲 弘前大学, 教育推進機構, 助教 (20886684)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 眼球運動 / 性格特性 / 認知モデル / 人間行動 / 表情認知 |
研究実績の概要 |
2023年度には、研究に直接関連するパイロット研究と行動実験を行いました。 パイロット研究では、ランドマークで表現された顔表情の動画に対する認知度を検証する分析を実施しました。本実験で使用予定のランドマークで表現された顔表情の動画を用いて、参加者に表情判断の実験を行ったところ、ポジティブな表情に対してはチャンスレベル以上の正解率を示したものの、ネガティブな表情に対しては識別が困難であることが確認されました。また、可視範囲を限定した条件下では、カーソルの移動と参加者の性格特性との間に相関が見られました。 行動実験では、意識的な眼球運動と無意識的な眼球運動を区別して検証するため、顔の印象評定実験を実施しました。その結果、可視範囲を制限しない条件と制限した条件での眼球運動とカーソル運動に明確な差が見られました。制限しない場合は顔の中央に焦点が集まりましたが、制限した場合は顔の各部位をきちんと観察する眼球運動が確認できました。この結果から、可視範囲が制限されていない場合、無意識的な眼球運動と意識的な眼球運動が混在していることが明らかになりました。また、範囲制限という実験手法を用いることで、意識的な眼球運動を抽出できることも確認されました。 さらに、複数のモデルを比較した結果、印象評定課題を研究目的とする場合、無意識的な眼球運動と意識的な眼球運動を含むデータを説明変数とする際に高い推定精度を示すことが分かりました。これは、研究目的に応じて異なる種類の眼球運動を使い分けることの重要性を示唆しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況としては、二つの研究目的に対して順調に検証が進んでいます。無意識と意識的な眼球運動を分離する手法は、行動実験を通じて検証することができました。さらに、無意識と意識的な眼球運動が実際に異なる課題においても、行動の分布が類似していることが確認されました。無意識と意識的な眼球運動が性格特性に影響を受けていることも明らかになりました。また、本実験で使用予定のランドマークで表現された顔表情の動画の認知度も検証することができました。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進策については、来年度も現在の進捗に沿って、本実験の実施と結果の解析に注力したいと考えています。また、これまでの実験結果から得られた反省点を踏まえ、ランドマークで表現された表情動画だけでなく、元の表情動画を用いた評価実験も行う予定です。これは、実験の難易度が研究目的に不必要な影響を及ぼすことを排除し、より本質的な眼球運動の影響を検証するためです。さらに、動的な眼球運動(時系列データ)と性格特性の関係性、およびそれらが印象形成や意思決定に与える影響についても、今後検討を深めていく予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用額が発生した理由は、一部の学会出張にかかる費用を大学の経費で処理したためです。また、余剰となった金額は、次年度の実験参加者への謝礼および備品の購入に充てる予定です。
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