研究課題/領域番号 |
23K16989
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 陸離 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (90896268)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドッキングシミュレーション / 膜タンパク質 / 創薬 / 細胞膜 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
本研究は、膜タンパク質に対するドッキングシミュレーション手法を確立することを目標としている。膜タンパク質は多様な機能を持つことから創薬における重要なターゲットとなっている。しかし、従来のドッキングシミュレーション手法は脂質膜の存在を考慮することができず、適切な評価を行うことができなかった。そこで、本研究では既存のドッキングスコアに対する補正項の提案を行った。分子と生体膜の関係を評価するために、疎水性指標である logP を原子ごとに分割した予測値を用いた。この疎水性指標と脂質膜に対する位置座標をかけ合わせて積算することで、得られたドッキングポーズが適切な位置にあるかを算出した。この手法の効果を検証するために、既知のタンパク質-リガンド複合体構造についてドッキングシミュレーションを実施した。その結果従来法と比較してより正解に近い構造を予測することができた。両親媒性の分子についても、親水性部分は水中に、疎水性部分は脂質膜中に存在する状態が適切であることを評価できた。さらに、特殊な構造や性質を持つ膜タンパク質に対しても適応可能にするために、構造情報を3次元的に評価する方法へと改良を行った。これらにより、従来は正確に評価できなかった膜タンパク質に対するドッキングシミュレーションを実施することが可能になった。現在は、膜タンパク質に対して作用する化合物のスクリーニングを実施しており、有用な化合物を選択でき次第、実験による評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜タンパク質に対するドッキングシミュレーション手法の基本的な部分については実装が完了しており、性能の実証も完了しているため。膜タンパク質に対するスクリーニングへの適用も進めており、実験による評価の準備も整えている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した手法を活用して化合物のスクリーニングを進め、実際の膜タンパク質に効果のある化合物を同定し、実験による検証を行う。また、多様な構造や性質を持つ膜タンパク質に対しても適応可能にするために、手法の改良を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算手法の開発が想定より早く進展したため、開発段階に適したワークステーション型計算機の購入を見送った。また、年度当初の半導体不足によりGPUを搭載した計算機が入手困難あるいは性能に見合わない価格の高騰が生じたことも理由の一つである。次年度は、確立した手法を検証していくうえで、規模の大きなシミュレーションに必要なスーパーコンピュータの利用に重点を置いて使用する計画である。
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