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2023 年度 実施状況報告書

含酸素炭化水素が煤前駆体の反応機構に与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K17060
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

鈴木 俊介  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60837623)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード多環芳香族炭化水素 / 含酸素炭化水素 / 流通式反応器 / 詳細化学反応モデル
研究実績の概要

ガソリン燃料の主成分であるトルエン、n-ヘプタン、イソオクタンという構造の異なる炭化水素にe-fuelの一つとして期待されている炭酸ジメチル(DMC)を混合した時の、多環芳香族炭化水素(PAH)の生成挙動への影響を調べた。PAHは煤の前駆体として知られており、近年は煤の排出規制が厳しくなっていることから、煤の低減に向けて煤生成過程の中でもキーとなるPAH生成過程を知ることは重要である。
まず、DMCに加え、バイオ燃料として期待されている2-メチルフラン単体におけるPAH生成挙動を調べた。DMCではほとんどPAHが検出されなかった一方、2-メチルフランではn-ヘプタン単体よりもPAHが多く生成するなど、再生可能燃料でもPAH生成挙動の傾向が大きく異なることを見出した。
次いで、n-ヘプタンおよびイソオクタンにDMCを混合すると、燃焼中に生成するPAHは減少することが実験的にも計算的にも明らかとなった。一方、トルエンにDMCを混合した時には、反応条件に依ってPAH生成量が増加する場合にもあれば減少する場合もあった。具体的には、低温ではトルエンの反応性に比べてDMCの反応性が相対的に高いため、DMCを混合することによってトルエンの消費反応が促進された結果、PAH生成量が増加した。一方、高温になるとトルエンの反応性も十分高くなるためDMCの混合はPAHを減少させる効果が強く現れた。
炭化水素の構造あるいはそれに起因する反応性の違いによって、DMCを混合した時のPAH生成挙動が異なるというのは、カーボンニュートラル社会における燃料をの構造をどのようにするのかを考える上で重要な知見である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究計画では、DMCなどの含酸素炭化水素単体を用いたときのPAH生成挙動を調べる研究を今年度に予定していた。しかし、実際にはそれに加え、DMCを構造の異なる炭化水素に混合した時のPAH生成機構を調べる研究も実施できたため、当初の計画以上に研究が進展していると言える。

今後の研究の推進方策

当初の計画で予定していた、既存炭化水素に構造の異なる含酸素炭化水素を混合した時のPAH生成挙動に関する研究は、近年他のグループから発表されるなど、少々新規性を欠く状況となっている。今年度の研究で示したように、炭化水素の中でも芳香環を持つトルエンへのDMC混合効果は非常に特異であることが明らかとなった。それでは、トルエンと構造の異なる芳香族でもDMC混合効果は類似しているのか否かということが次の大きな問いとして挙げられる。そこで、今後は、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼンなど芳香環を分子構造に持ちつつ、トルエンとは構造の異なる芳香族に対する含酸素炭化水素のPAH生成に対する混合効果を明らかにする研究を推進する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が468円となった理由は、これ以上研究に必要な物品等を購入するには残額が少なすぎたためである。次年度は当初の予定通り、実験での消耗品や旅費などを中心に助成金を使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Experimental and modeling study of fuel-rich oxidation of gasoline surrogate components/dimethyl carbonate blends in an atmospheric flow reactor2024

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Suzuki, Akira Matsugi
    • 雑誌名

      Combustion and Flame

      巻: 261 ページ: 113332

    • DOI

      10.1016/j.combustflame.2024.113332

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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