研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヨルダンとトルコを対象地域としてシリア難民による難民主導型組織の形成と展開を明らかにし、これを一助としながら実現している難民の自発的なレジリエンス確保の過程を描出することである。本年度は、昨年末のヨルダン渡航の際に収集したフィールドデータや書籍を整理しつつ、SNSなどのウェブ上において、難民主導型組織が発信する情報を集めて分析してきた。一部の成果は、分担執筆にて出版されている(「第3章 市民社会ー脱政治化されるヨルダン君主制下NGOsの展開」中村覚編『君主制諸国』ミネルヴァ書房、2023年6月、pp. 73-95.)。ヨルダン国内に留まらず、シリア難民の越境的な活動は中東域内及び域外に及んでおり、彼らのネットワークを明らかにするために、SNSでの発信を精査することは有効であることが改めて明らかになった。本研究の対象としているトルコを始め、域内外に張り巡らされたネットワークを少しずつ解明している段階であり、次回渡航の調査対象の選定も進んでいる。また、シリア難民自身のレジリエンス確保については、彼らが集中する都市部以外すなわち農村部での生存について、主に季節労働であるオリーブ産業に従事する様子を、フィールドワークを下に発表している(Marie Sato, Izumi Izumi, Majed Abu-Zreig, Koichi Unami. “Linking population fluidity and olive production in Jordan and Syria”, Desert Technology XV (DTXV) International Conference on Arid Land, 3-6 June 2023, Dead Sea, Jordan.) 。
|