研究課題/領域番号 |
23K17180
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
難波 修史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20845961)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 表情 / 感情 / 文脈 |
研究実績の概要 |
本研究が取り組むのは,特定の文脈において眉や口角の上昇といった表情が観察者にどの ような情報を伝達するのか,という問いである。この問いに対して,楽しい場面と笑顔を同時呈示した際に,感情表明,行動準備,他者指示,外的環境の明示という4つの情報のうち,どの情報がより強く伝達されるかを調べた。その際に,表情表出者が一人でいる場合,他者といる場合,親しい友人といる場合の3条件で,それらの間に違いが出るかを検討した。その結果,内的状態(楽しさ)の表現は他の情報と比較してより強く伝達されるが,他者と一緒にいる条件では,一人・友人条件よりも弱いことが示された。他者指示に関しては,すべての条件で最も優先度が低い情報であったが,他人の存在により情報の強度が増幅されることが確認された。全体としてこれらの知見は,感情表現に関する理論を支持する新たな証拠を提供する。この成果はJapanese Psychological Research誌に採択された。さらにロボットを使用した実験を用いて,質疑応答場面における情報伝達も検討した。その結果,対話相手から質問を受けた後に眉間に皺を寄せて目を細めると,真顔の場合よりも,「考え事をしている」や「人間らしい」などの帰属を引き起こすことを確認した。この成果は,International Journal of Social Robotics誌に投稿している。以上の研究により,特定の文脈における表情上の伝達情報がどのように変化するかに関しての研究は進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究1と研究2と関連する実験が予定通り進行され,その成果が英文誌に採択されている。現在までで,内的状態および表情の対象として,楽しさおよび笑顔のみに知見が限られるので,今後さらに拡張していく予定である。研究3とも関連するロボットを用いた表情実験も進展しており,申請書以上に充実した研究成果を生み出せることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で研究1と研究2と関連する実験が予定通り進行され,その成果が英文誌に採択されている。現在までで,内的状態および表情の対象として,楽しさおよび笑顔のみに知見が限られるので,今後さらに拡張していく予定である。研究3とも関連するロボットを用いた表情実験も進展しており,申請書以上に充実した研究成果を生み出せることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた物品(デスクトップPC)の購入を見送ったことおよび,学内業務が多く生じることで学会発表を見送ったため,大幅に次年度使用額が生じた。その分,実験参加者に支払う謝金や実験や調査及び授業をサポートする研究パートタイマーへの費用に充てることで,経験的証拠をさらに蓄積し,充実した研究計画を予定している。
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