研究課題/領域番号 |
23K17183
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
宮川 泰明 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60804599)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胃 / 消化 / 有限要素法 / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
胃の主な役割は食物の消化である.胃中央部で発生したぜん動運動が,胃の出口である幽門に向かって伝播していくことで食物と胃液が混合され,胃液の化学的な作用や,胃壁によってすり潰されることで食物は小さくなっていく.このぜん動運動はカハール介在細胞を中心とする胃の神経系によって制御されている. 現在までに数値シミュレーションを駆使し,消化のメカニズム解明のため,胃壁の運動と消化の関係が明らかにされ始めている.しかしながら,従来の研究は胃の電気的な活動を一切考慮していないため,胃の電気的性質と消化のメカニズムに関しては未解明である. そこで,本研究課題では,胃の電気的性質と食物の消化の関係の解明のため,電気生理学と流体力学・構造力学を統合した新しい胃シミュレータを構築し,それを用いて胃の電気的性質と食物の消化の関係を撹拌量や排出量といった流体力学的諸量に基づき定量化する. 初年度は,本研究課題の肝となる,胃の電気的性質を考慮した新たなマルチスケールぜん動運動シミュレータの構築に取り組んだ.非線形有限要素法を用いた胃壁の計算力学モデルの構築は完了し,それを用いた応力解析により,ぜん動運動時に胃壁の筋肉が発揮している力を推定し,それが生理的に妥当な範囲内であることが確認された.これにより,胃の柔軟性を考慮した数値シミュレーションが可能となり,シミュレータの大部分は完成したが,胃壁の電気的な活動を考慮するのに多少時間がかかってしまい,この部分が多少遅れている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は,胃シミュレータの構築を行った.胃壁を弾性体とし,非線形有限要素法を用いて胃壁モデルを作製した.作成した胃壁モデルを用いて,ぜん動運動時に胃壁の筋肉が発揮している応力の大きさと位置の推定を行った.推定された応力値は生理学的にも妥当な範囲であり,胃壁モデルの生理学的な妥当性が検証された.しかしながら,電気生理学モデルとのカップリングには多少時間がかかってしまっており,この部分がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,遅れている胃シミュレータの構築を最優先に進め,早い時期にシミュレータを完成させる.次に,完成させたシミュレータを用いて,胃の電気的性質と食物の消化の関係を撹拌量や排出量といった流体力学的諸量に基づき定量化していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なGPU需要の増加により,当初購入を予定していたGPUの購入ができなかったため,次年度使用額が生じた.この予算を用いて,次年度に購入予定であったワークステーションをアップグレードすることで,研究の推進を図る.
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