研究課題/領域番号 |
23K17196
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧 功一郎 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (90849233)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / クロマチン / ゲノムDNA / 超解像度顕微鏡 |
研究実績の概要 |
生体組織は、力学環境に応じて再構築(リモデリング)し適応する。生体組織の力学適応は、メカノセンサ細胞(司令塔)による力感知を通じて達成される。例えば、骨組織においては、骨基質に埋没した骨細胞が、荷重負荷により生じる間質液の流れを感知することで、骨形成・骨吸収のバランスを調整する。骨細胞による力感知の仕組みとして、張力感受性のイオンチャネルが応答するモデルがこれまで提唱されてきたが、骨細胞が力学負荷依存的に特定の遺伝子発現(情報の出力)を導くメカニズムは不明であり、その解明が望まれている。本研究では、骨細胞が有する力―情報変換機能(力感知機能)の解明を目指し、細胞核内において遺伝子発現の制御を司るクロマチン動態の力学的理解を目的としている。 本研究計画の1年目では、細胞核内の力学環境を理解するため、原子間力顕微鏡や電子顕微鏡を用いたナノスケールの構造解析を進めてきた。その結果、骨細胞においては、ヒストンの末端が優先的に刈り込まれることで(クリッピングされ)、可逆的なヒストン修飾が生じにくい安定的なクロマチン構造を形成することで、骨細胞特異的な遺伝子発現パターンが生じる可能性が示唆された。 本研究計画の2年目では、細胞核内の力学環境におけるクロマチンを介した遺伝子発現メカニズムを探る第1歩として、二重らせん構造を有するDNA自体に生じる構造変化を捉えるための技術を開発し、国際的学術誌において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞核内の力学環境におけるDNAの構造変化に着目した研究成果として1編の国際的学術誌に発表しており、さらにもう1編も査読中である。次年度の研究計画においてクロマチンに生じる高次構造変化を捉えるための基礎的検討も完了しており、さらなる成果発表を予定している。よって、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、クロマチンに生じる高次構造変化をマクロな視点から探るための技術開発を通して、細胞核内の力学環境においてクロマチンを介して遺伝子発現が制御される基礎的なメカニズムを探る予定である。 さらに、骨組織の力学適応を担うメカノセンサ細胞(骨細胞)の機能性に着目した検討を進めることにより、骨細胞が力感知機能を発揮する本質的な機構に迫る予定である。 本研究は、骨細胞による力-情報変換メカニズムを、骨細胞が有するクロマチン構造に着目し、力学的観点から理解しようとする点で独自性を有しており、骨細胞が力学負荷依存的に特定の遺伝子発現(情報の出力)を導く本質的なメカニズムを提案する点で新たな研究分野の開拓が期待できると考える。
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