研究課題/領域番号 |
23K17264
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研究機関 | 公益社団法人函館市医師会函館市医師会看護・リハビリテーション学院(生体医工学研究センター) |
研究代表者 |
古館 裕大 公益社団法人函館市医師会函館市医師会看護・リハビリテーション学院(生体医工学研究センター), 生体医工学研究センター, 研究員 (90900209)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 手指リハロボット / 手指伸展アシスト / 3Dプリンタ / 関節角度 |
研究実績の概要 |
本研究は,片麻痺の重い人から軽い人までを1台で治療できる在宅向け手指リハロボットの開発を最終目標としている.これについて我々は,「患者が自身の回復度に合わせて,①筐体・アシスト機構と②ロボットが行う治療プログラムの2点を自在にカスタマイズできるロボット」を提案しており,①②の実現方法を明らかにすることを本課題の目的としている. 初年度である2023年度は,筐体・アシスト機構の実現を中心に研究を進め,以下の成果を得た. 1.筐体の設計・実装…全体の構想をパソコンのマウスのような形状とし,患者が手を載せるだけで使えるような設計とした.さらに筐体を,①片麻痺手指特有の不随意的な握り込み状態を想定してカスタマイズできる手指鍵盤パーツ,②手指鍵盤パーツを取り付ける土台部分の2つに分けて設計した.設計後は①②を3Dプリンタにより印刷し,予備実験として健常若年者の手指が筐体に当てはまるかどうかを確かめたところ,手指の姿勢を問わず筐体がフィットすることが明らかとなった. 2.アシスト機構の設計・実装…片麻痺手指は握りこみにより手指の伸展動作が困難となるため,この動きをアシストする機構の設計を行った.具体的には,ギアモータの駆動と共に上下に往復し,手指を下から上に持ち上げて伸展動作のアシストを行う機構を開発した.実現したアシスト機構の有効性を確かめるため,①健常若年者を対象としてアシスト前後の手指の関節角度の変位,②アシスト機構が発生できる最大アシスト力の2つを測定した.この結果,アシスト機構は個々の手指の伸展をもたらせることが明らかとなった.しかし,片麻痺が重い患者が行う「手を一斉に開く練習」など,複数の手指を同時に動かすことを想定したアシストでは,アシスト力不足であることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り,2023年度は筐体・アシスト機構の実現を中心に研究を進め,手指の握りこみ状態に合わせてカスタマイズできるロボットのデザインを明らかにできた.また,アシスト機構の設計・実装で明らかとなったアシスト力不足については,ギア比の高いギアボックスを開発することで,解決できる可能性も見えている.このため,計画通りに研究が進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度で筐体・アシスト機構の基本的なデザインを確立できたので,今後は2023年度の成果を基盤として以下に取り組みたい. 1.筐体の改良…予備実験にて,健常若年者の手指に対するロボットの良好な当てはまりは確認できたが,患者に対しては確認できていない.特に,若年者と高齢者で手の大きさに違いがあることが想定されるため,これに対応できるような筐体のデザインを明らかにしたい. 2.アシスト機構の改良…複数の手指を一斉に伸ばす動きに対するアシスト力不足が明らかとなっている.このことから,どのくらいの力が複数の手指の伸展アシストに必要で,3Dプリンタでギアボックスを作成した際にどのくらいのトルク伝達のロスが生じるのか,ロスを考慮してどのようなギアボックスを設計したら良いかを明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】当初は,患者を対象とした実験を計画し謝金を計上していた.しかし,次年度以降もさらなる筐体の改良が必要と判断し,実験を行わなかったためにこの分の支出が発生しなかった. 【使用計画】筐体改良のための材料費として繰り越すこととした.
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