研究課題/領域番号 |
23K17322
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末光 哲也 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (90447186)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 半導体 / テラヘルツ / 進行波増幅 |
研究実績の概要 |
進行波管の固体化は、マイクロ波帯域では不可能であったが、テラヘルツ帯域になるとその可能性が見えてくる。なぜなら、進行波の周期が十分に短くなることによって一周期の間に走行する電子が一度も散乱を受けることなく通過する確率が高くなるため固体中であっても真空と同様に扱うことが可能になると予測されるためである。その結果として表れる固体中での進行波増幅現象を実験的に確認するため、まず素子設計に必要となる各種材料パラメータの収集を行った。また、素子作製に必要となるプロセス装置の準備を行った。 材料パラメータの収集では、対象とする窒化物半導体の各種物性定数を文献やTCADドキュメントより収集した。特に、窒化物半導体では従来のIV族やIII-V化合物半導体にはない分極効果が見られるため、分極効果がショットキー障壁高さなど他の物性定数に影響を与えることをこれまでに指摘しており、その他の物性定数についても影響の有無を継続して調査する予定である。 素子作製に使用する装置の準備として、有機金属気相成長装置(MOVPE装置)、マスク露光装置、レジスト塗布装置、現像用ドラフトチャンバー、誘導結合型反応性イオンエッチング装置、オーミック電極形成用高速アニール装置等を実験室に確保し、用力や吸排気装置、原料ガス供給設備、除害設備等と接続して運転可能な状態とした。一部装置では実際に運転して動作確認まで達成した。その他の装置についても順次確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒化物半導体により進行波管の固体化を実現する目的を達成するため、素子設計に必要となる材料パラメータを収集し、素子設計の準備を整えることができた。今後、最適な材料の選定と素子構造の具体化を進める。また、素子作製に必要となる装置類を集めた実験室を立上げ、大がかりな電源、冷却水、排気ダクト等の工事を終えて個々の装置の稼働が可能となった。今後、更にいくつかの装置を移設し、素子作製工程を完結できるように仕上げていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って固体進行波管実現に向けて素子設計・試作を行う。素子設計では、TM波からTE波への変換器、および、導波路について個別に検討し、それらを組み合わせてテラヘルツ発振器を構成する。導波路はGaN/AlGaNヘテロ構造を基本と考えるが、電子速度の点で有利であるInNやInGaNの可能性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題におけるデバイス試作での使用のために移設を予定している装置の一部の移設作業が2024年度になったため、移設およびその後の装置立上げに必要な費用を次年度使用として確保しておいた。
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