研究課題/領域番号 |
23K17353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 誠司 京都大学, 工学研究科, 教授 (30397682)
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研究分担者 |
柳瀬 陽一 京都大学, 理学研究科, 教授 (70332575)
大同 暁人 京都大学, 理学研究科, 助教 (80884626)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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キーワード | トポロジカル / 超伝導 / スピン偏極 / マヨラナ励起 |
研究実績の概要 |
初年度はトポロジカル超伝導候補物質であるFeTeSeを用いて、期待されるカイラルp波超伝導状態が生むスピン偏極状態の観測を試みた。その結果、超伝導状態に転移した条件のもとで、FeTeSeにおけるスピン偏極状態由来と期待されるスピン信号の電気的検出に成功した。対象実験として従来型(BCS)のs波超伝導を示すNbNを用いて実験を行ったが、NbNではスピン偏極状態由来のスピン信号は観測されなかった。これはマヨラナ励起を許すカイラルp波超伝導状態の物性探索に突破口を開く結果であると同時に、材料面でp波超伝導を許す材料が極めて少なく材料探索に大きなエネルギーが傾注されている中で、新たな視点からp波超伝導物質を探索するツールを手に入れたことを示唆する。次年度以降、引き続き研究を進め、より確実な証拠を手に入れると共にFeTeSe以外の物質系における計測を推進する。
また同じくFeTeSeが、そのDirac的なスピン偏極バンド構造とスピンテクスチャゆえに許容する可能性がある超伝導ダイオード効果についても探索を行い、狙い通りの超伝導ダイオード効果を観測することに成功した。これについては対象実験を推進しながらその背景学理の探索を次年度以降推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度からカイラルp波超伝導由来と期待されるスピン偏極信号を観測できたことは順調な滑り出しといえる。また当初計画外であった超伝導ダイオード効果に関しても大きな進展があったことは評価できる、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、トポロジカル超伝導由来のカイラルp波超伝導性が生じるスピン偏極状態の探索・検証を続けると共に、対称性の破れが生み出すp波超伝導状態の観測への挑戦も開始する。また、中性粒子であるマヨラナ準粒子の計測をいかに実現していくかに関する調査・検討も徐々に進めていく。また、カイラルp波超伝導体以外でもp波をホストする物質群に着目して研究を行う。同時にRashba的なスピンテクスチャが許容する超伝導ダイオード効果にもよりスコープを広げて超伝導スピントロニクスの観点から新物性現象の探索を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
オープンアクセスジャーナルへの論文投稿・出版に備え、その他経費として計上した。
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