研究課題/領域番号 |
23K17410
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 研一 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (50812301)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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キーワード | 生体触媒 / 中分子 / 天然物 / 生合成 |
研究実績の概要 |
ポリケチドやポリケチド-ペプチドハイブリッド化合物は、医薬資源として重要な中分子群である一方で、非常に複雑な化学構造のため、これらを合成するための統一的な手法は確立されていない。本研究は、高度な分子認識能を有する生体触媒を活用し、ポリケチド骨格を固相上で合成する統一的な方法論を開発するとともに、合成したポリケチド鎖を天然物に匹敵する複雑さをもつハイブリッド中分子へと昇華するための多段階生体触媒フロー合成系の構築を目指す。本年度は主に、鎖状骨格構築後の構造多様化段階に関する検証を重点的に進めた。具体的には、酵素触媒の固定化法を検証し、新たな方法で固相に固定化した酵素触媒による分子変換が可能であることを示した。また多様化段階に用いる酵素触媒のレパートリーを拡充した。環化酵素についてはファミリー全体での網羅的な検証を進めており、詳細な検証を行ったものについては各々の基質選択性の差異が明らかになった。アルキル化酵素については、既存のものよりも基質選択性が大幅に寛容なものが複数得られた。今後、これらの選択性をさらに詳細に解析することで、基質毎に最適な酵素触媒を選択できる体制の構築を目指す。またポリケチドユニット合成にむけてC-C結合形成酵素触媒の開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、鎖状分子の効率的に構造多様化する生体触媒フロー合成法を開発するため、酵素触媒の固定化法を検討した。まず組換えタンパク質を発現後に直接固相へする方法を検討した。その結果、非共有結合性の相互作用により、組換え酵素を固相に位置選択的に固定化できることを確認した。次に固定化した酵素触媒が活性を示すか検証した。ペプチド環化酵素PBP-type TEを固相に担持し、脱離基を付与した直鎖ペプチド基質と混合したところ、環化反応が効率よく進行した。以上により簡便な固定化酵素触媒の調製法を確立した。 また、本年度は鎖状基質の構造多様化のための酵素触媒を探索した。具体的には、ペプチド環化酵素PBP-type TEと、ペプチドアルキル化酵素PTについて、それぞれのタンパク質ファミリー全体で系統解析を行い、これらを異なる基質特異性をもつと予想されるサブグループに分類した。環化酵素については、サブグループから代表的な配列を選抜し、組換え酵素の活性を簡便なin vitro試験によって評価した。その結果、複数の組換え酵素にて環化活性が確認された。今後より詳細な解析を進める予定である。ペプチドアルキル化酵素については、アルギニンビスプレニル化酵素のサブクレードに着目し、組換え酵素の調製と機能解析を進めた。その結果、既存のAgcFよりも基質選択性が大幅に寛容であり、様々な鎖状・環状ペプチドのビスブレにル化を触媒可能なものが複数得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、未着手の生体触媒を用いたC-C結合形成反応の開発に着手する。これに向けてC-C結合形成反応を触媒するケトシンターゼやアルドラーゼ等の酵素ファミリーを対象に、配列探索と組換え酵素の機能解析を行う。また環化酵素については、各ホモログ酵素の機能解析を継続し、それぞれの基質選択性の差異を明らかにする。これにより、基質毎に最適な酵素触媒を選択できる体制の構築を目指す。
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