我々は、tRNA修飾の欠失や異常が様々な疾患発症の原因となることを明らかに、RNA修飾病(RNAモドパシー)という概念を提唱した。同疾患では、RNA修飾を正常化することが、その予防や治療に繋がることが期待できる。RNA修飾病は、遺伝子変異等によりtRNA修飾酵素のloss of functionが原因で起こる。また遺伝性疾患の11%は異常な終止変異に起因することが知られており、RNA上の異常終止コドンを通常コドン様に変化させることができれば、疾患発症を阻止できることが期待できる。しかし、現在のところ、目的のRNAの目的の塩基のみを自在に化学修飾する技術は存在していない。そこで本研究では、自由自在にtRNAやmRNAの修飾を編集し、RNA機能を回復させるというゲノム編集技術に次ぐ新たなセントラルドグマ編集技術の開発に挑む。 今年度は、人工snoRNAを用いて目的RNAをメチル化/シュードウリジン化(Y)する技術の開発に取り組んだ、具体的には、マウスtRNAPheに対する幾つかの種類野人工snoRNAを設計・合成し、それをFTSJ1 KO線維芽細胞 (既に作製済み) に導入した。導入効率は、60から70%であることを確認した。導入後、同細胞内のtRNAPheの32Cおよび34Gの2’-O-メチル化修飾が回復するか質量分析法にて検討した。すると、ある配列の人工snoRNAを導入すると、2’-O-メチル化修飾が20%まで低下することが確認できた。さらにこの細胞にFTSJ1を強制発現させると、修飾が回復する事を確認した。
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