研究課題
本研究では、イオン液体を薬物送達体として「皮膚角質層の突破」及び「腸管上皮細胞の突破」という中分子医薬品を経皮・経口投与する際の最も大きな課題を一気に解決するための低侵襲投与法を開発する。既にイオン液体を用いて中分子医薬品の経皮・経口吸収に成功している。これらの成果を基盤とし、イオン液体のさらなるブラッシュアップを行うと共にその吸収促進機構の解明を目指して研究を行った。モデルとしてがん特異的WT1タンパク由来ペプチド(SGQAYMFPNAPYLPSCLES, MW:2075)を使用し、イオン液体を用いてマウス皮膚に塗布することで抗腫瘍効果が得られるか、評価を行った。その結果、特に、イオン液体にアジュバントを溶解させたものを前塗布する事で、高いがんワクチン効果が得られることを確認した。一方、別のイオン液体に乾癬疾患関連遺伝子であるIL-17に対するsiRNAを溶解させ、乾癬モデルマウスの皮膚に塗布したところ高い遺伝子抑制効果と皮膚の肥厚抑制効果が観察された。さらに、これら用いたイオン液体に分子量既知の蛍光(FITC)標識デキストランを溶解させて皮膚に塗布したところ、分子量が20kDa以下のものであれば経皮吸収されて血液中にまで移行することが明らかとなった。これらの結果から、イオン液体の種類によって、中分子化合物は細胞内にも、細胞間隙を通過して免疫細胞にも、さらには血管にも到達しうることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
イオン液体の更なるブラッシュアップを行うと共に、その中分子吸収促進機構の解明を目指して研究を行っている。中分子の透過性だけでなく、実際の薬理作用向上や、透過促進機構の一端を明らかにすることができ、当該年度に掲げた目標を概ね達成できていることから、順調に進展していると判断した。
研究は計画通りに順調に進捗しており、次年度は腸管吸収改善に係る研究に集中し、当初計画にしたがって研究を進める。具体的には、中分子のモデルペプチドとしてGLP-1 受容体作動薬のセマグルチド(MW 4,114)を使用し、経口投与後の吸収改善と薬理効果の獲得を目指す。
令和6年3月に納品された物品及び旅費の支払いが完了していないためである。令和6年4月に支払が完了している。
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The AAPS Journal
巻: 25 ページ: 27-27
10.1208/s12248-023-00790-w