研究課題/領域番号 |
23K17481
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中西 淳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, グループリーダー (60360608)
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研究分担者 |
山本 翔太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 研究員 (10785075)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 液々界面 / 細胞培養 / SDGs / がん |
研究実績の概要 |
申請者は通常細胞培養に用いられるプラスチック培養皿の代わりに,水と二相分離する疎水性液体の界面で細胞培養を行う技術の開発に取り組んでいる。本研究では,これまで疎水性液体として用いてきたパーフルオロカーボンの環境負荷が大きいことを踏まえ, SDGsに即した新たな疎水性液体の探索を行う。さらに培養モダリティの拡張や,液体界面で培養した間葉系幹細胞を用いたがん治療技術の開発に取り組み本培養技術の有用性を実証することを目指している。初年度は,疎水性液体としてシリコーン液体の検討から着手した。水より比重の大きいシリコーンの中から細胞の蛍光観察に適した屈折率を有する4種類を対象とした。エマルション形成により培地中のシリコーンを過飽和状態にした上で,MTSアッセイによりイヌ尿細管上皮由来MDCK細胞に対する毒性試験を行った。どのシリコーンも非添加の場合よりは若干生存・増殖率は落ちるものの,顕著な細胞毒性は示さなかった。そこで粘性が顕著に異なる2種類のシリコーンに絞り,界面にフィブロネクチンコートしたのちに,Lifeact-GFP恒常発現MDCK細胞の培養を行った。その結果,粘性の高いシリコーンの上でより安定に細胞が接着することを見出し,パーフルオロカーボンに代わる新しい疎水性液体候補を特定できた。次に,より高度なサステイナビリティを目指し,一度培養に使用した液体を循環利用についても検討した。この観点では,不揮発性のイオン液体は乾熱処理による滅菌作用が可能である。毒性スクリーニングと機械学習を利用することで,これまでの初期スクリーニングでは見逃されていたアンモニウム型のイオン液体も細胞培養足場となることをつきとめ,さらに乾熱滅菌による再利用可能なことを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パーフルオロカーボンに代わるSDGsに即した新たな疎水性液体候補として有用なシリコーンを見出すことができ,しかもその粘性が細胞接着に与える影響も明らかにすることができた。さらに,より高度なサステイナビリティの観点で,アンモニウム系のイオン液体が細胞足場として循環有用可能であることを実証し,これは当初の計画よりも一歩進んだ大きな成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に見出した2種類の疎水性液体(シリコーンとアンモニウム系イオン液体)を用いた分散培養による培養効率の向上や,それら界面で培養した細胞の遺伝子発現や抗がん活性についての検討を進め,本技術の医療応用の可能性を探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室に現有の装置にレーザーを追加購入することを想定していたが,2023年度の計画では短波長で十分であったために,翌年度以降に複数のレーザーを同時購入する方が合理的と判断したため。
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