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2023 年度 実施状況報告書

方言差に着目した実験心理言語学:フィールド・理論・実験心理言語学の協働にむけ て

研究課題

研究課題/領域番号 23K17498
研究機関東京大学

研究代表者

広瀬 友紀  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50322095)

研究分担者 黄 竹佑  名古屋学院大学, 外国語学部, 講師 (70908665)
峰見 一輝  立命館大学, スポーツ健康科学部, 講師 (90906968)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2026-03-31
キーワード近畿方言 / 視線計測実験
研究実績の概要

今年度は主に、近畿方言のアクセント式の区別と、後続要素に後続要素に条件づけられた声調の変化を利用した絵選択課題のなかの、反応時間計測実験(リモート課題で、データ収集は前年度に収集済み)のデータ分析および、視線計測実験のデータ収集に注力した。
前者については、近畿方言話者が、近畿方言独特のアクセント式に制御された、純粋な音韻レベルの現象である声調変化の情報を、後続語の特定という処理にたしかに利用していること、ただしその効果のあり方は、特定の声調の連続の場合に限られたものであること、さらに予測外の結果として、本来当該知識を持たない東京方言話者においても同方向の弱い効果が生じていることが明らかとなり、この結果を国際雑誌への掲載という形で成果を報告することができた(Quartery Journal of Experimental Psychology)。
一方、後者の視線計測実験については、適切な被験者のスクリーニングが困難であったため、必要な数の話者を確保するしたうえで、アクセントのスクリーニングまでを施す作業が途上に終わった。しかし、複数の現地調査を経て、予備分析が可能である程度の近畿方言話者のデータと、比較対象となる東京方言話者のデータは確保できているため、翌年度早々に分析を終えることができるみこみである。
この他、同じく近畿方言の声調変化の知覚を、アクセント逸脱への反応という観点から脳波計測実験を計画しており、その刺激作成にも着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近畿方言話者を対象とした実験においては、細かい地域間、また個人間での語アクセントの揺れが大きく、個人ごとのスクリーニングに加えて、同じ個人のなかでも、ターゲット語ごとの発音確認をして、トライアル毎のデータスクリーニングをあわせて行う必要があり、実験計画の遂行に予想を大きく上回る遅れが生じたい。ただしこうした複雑な作業が必要であること自体が、方言を対象とした研究を行ううえでの不可欠な知見であり、これを、後続する実験の計画に盛り込んだ形で今後の研究計画のアップデートを行いたい。

今後の研究の推進方策

R6年度は、まず第一に、近畿方言話者を対象にした視線計測実験のデータと、アクセント確認発話調査のデータをすりあわせて、視線分析の対象とするデータスクリーニングを早急に完了し、視線データの分析と、その論文化を行う。引き続き、近畿方言におけるアクセント式の区別と、後続要素に後続要素に条件づけられた声調の変化を利用した新たな題材の、より高次な処理までの予測について検討できる実験計画に着手する予定である。ここまでの実験実施過程で得られた、方言話者のスクリーニングにおける反省点や経験を活かし、よりスムーズに実験が遂行できるよう計画を必要に応じて見直しつつすすめる。

次年度使用額が生じた理由

前述したとおり、近畿方言話者を対象とした視線計測実験において、想定通りのアクセントの式・型が必ずしも一律に共有されておらず、その地域差や個人差が当初の予測を上回るものであった。このため参加者全員に発音調査を予め実施し、その結果を分析したうえで、スクリーニングを通過した一部の被験者候補のみに実験を行うという複数の段階を経ることとなり、当初の想定以上の時間を要することとなった。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] Sandhi-based predictability of pitch accent facilitates word recognition in Kansai Japanese speakers2024

    • 著者名/発表者名
      Ito, Aine and Yuki Hirose
    • 雑誌名

      Quarterly Journal of Experimental Psychology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1177/17470218241237219_

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Pre-verb reactivation of arguments in sentence processing2023

    • 著者名/発表者名
      Isono, S. & Hirose, Y.
    • 雑誌名

      Glossa Psycholinguistics

      巻: _2(1). ページ: -

    • DOI

      10.5070/g6011180

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] From Lab to Web: PCIbex and its Potential in Web-Based Eye Tracking for Psycholinguistics.2023

    • 著者名/発表者名
      Kishiyama, T., Yamashita, Y., Ito, A., & Hirose, Y.
    • 雑誌名

      IEICE Technical Report

      巻: 123(197) ページ: 59-64

  • [雑誌論文] The role of allophones in phoneme perception models: Do devoiced vowels trigger vowel epenthesis?2023

    • 著者名/発表者名
      Kishiyama, T., Huang, C., Furukawa, K., & Hirose, Y.
    • 雑誌名

      Proceedings of the 20th International Congress of Phonetic Sciences

      巻: - ページ: 191-195

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discrepant Combinations of Acoustic and Visual Speech Signals and Its Relation to Acoustic Distance in Vowels2023

    • 著者名/発表者名
      Matsubara Risa, Terumichi Ariga, Takeshi Kishiyama, Chuyu Huang
    • 雑誌名

      Proceedings of the 20th International Congress of Phonetic Sciences

      巻: - ページ: 4176-4180

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 早押しクイズにおける超次単語予測の認知モデリング2024

    • 著者名/発表者名
      山下陽一郎, 原田宥都, 大関洋平
    • 学会等名
      言語処理学会第30回年次大会
  • [学会発表] 子どもは英文法知識をどのように習得していくか?(1)―Wh疑問文と関係節に着目して―2023

    • 著者名/発表者名
      広瀬友紀
    • 学会等名
      日本言語学会第166回 公開特別シンポジウム「言語学から見た子どもの英語習得」
    • 招待講演
  • [学会発表] ことばを使う「私」、「私」の使うことば2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤たかね
    • 学会等名
      秋田大学教育文化学部附属中学校講話会
    • 招待講演
  • [学会発表] 動詞形態素の獲得過程における語彙アスペクトの影響―第二言語として英語を学習する子どもの自然発話を用いた分析―2023

    • 著者名/発表者名
      深津聡世・広瀬友紀_
    • 学会等名
      日本第二言語習得学会第23回国際年次大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 日本語を母語とする子どものL2英語における名詞句習得の発達段階―縦断的産出データに基づくケーススタディ―2023

    • 著者名/発表者名
      田中広宣・広瀬友紀_
    • 学会等名
      日本第二言語習得学会第23回国際年次大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 早押しクイズでの先読みにおける眼球運動のモデリング2023

    • 著者名/発表者名
      山下陽一郎, 原田宥都, 大関洋平
    • 学会等名
      NLP若手の会(YANS)第18回シンポジウム
  • [学会発表] 「かどうか」によるwh句の錯覚的認可─時間制限付き容認性判断実験─2023

    • 著者名/発表者名
      峰見一輝
    • 学会等名
      日本言語学会第166回大会
    • 国際学会
  • [図書] Issues in Japanese Psycholinguistics from Comparative Perspectives Volume 2: Interaction Between Linguistic and Nonlinguistic Factors2023

    • 著者名/発表者名
      Hirose, Y. and R. Mazuka
    • 総ページ数
      18
    • 出版者
      Developmental changes in the interpretation of an ambiguous structure and an ambiguous prosodic cue in Japanese
    • ISBN
      978-3-11-077881-6
  • [図書] AIから読み解く社会:権力化する最新技術2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤たかね
    • 総ページ数
      13
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      978-4-13-053033-0
  • [図書] ことばを科学する_理論と実験で考える、新しい言語学入門2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤たかね
    • 総ページ数
      214
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      978-4-254-51074-4
  • [図書] 第5章 生成文法に基づく言語処理メカニズム研究2023

    • 著者名/発表者名
      峰見一輝・矢野雅貴
    • 総ページ数
      29
    • 出版者
      くろしお出版
    • ISBN
      978-4-87424-961-1

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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