研究実績の概要 |
当初の計画に従い、2023年度は就労者を対象とした調査を設計し、調査機関に委託して調査を実施した。「就業構造基本調査(2022年)」の性別・年齢別の就労者構成にマッチする形でサンプルが得られるように設計し、13,150人から回答を得ることができた。 調査結果のミクロデータを利用していくつかのDiscussion Paperを執筆し、公表した。具体的には次の通りである。①「ポストコロナの在宅勤務の動向:企業及び就労者へのサーベイ」, RIETI Discussion Paper, 24-J-010.②「日本企業・労働者のAI利用と生産性」, RIETI Discussion Paper, 24-J-011.③「マクロ経済及び賃金見通しの不確実性:個人レベルの分析」, RIETI Discussion Paper, 近刊. また、これらの成果を研究会やコンファレンスにおいて報告した。研究成果の一部は政府の「新しい資本主義実現会議」の事務局資料の中でも引用されている。 本研究の焦点である規制のコンプライアンス・コストについては、調査データの集計・分析を進めている。暫定的な結果の要点は、①就労者の約38%が規制対応業務に携わっている、②規制に対応するための労働投入時間は総労働投入量の約12%(年収でウエイト付けすると約14%)、③大学・大学院卒の高学歴者、業務独占資格を保有している労働者は規制対応労働投入量が多い、④規制に対応するための労働投入はマクロ経済の生産性に無視できない不確実性の影響を持っている、である。これらの結果を研究会で報告し、そこでのコメントなども踏まえて、今後、論文化を進めていく予定である。
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