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2023 年度 実施状況報告書

最不安定解から見るポテンシャル風景と時定数問題

研究課題

研究課題/領域番号 23K17653
研究機関北海道大学

研究代表者

西浦 廉政  北海道大学, 電子科学研究所, 客員研究員 (00131277)

研究分担者 岩崎 悟  大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (00845604)
降籏 大介  大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (80242014)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
キーワード自由エネルギー / ナノ微粒子 / 構造保存数値解法 / 相分離 / 自己組織化 / Cahn-Hilliard 方程式
研究実績の概要

ナノ微粒子ポリマーなど自己組織的に形成される3次元形態予測及びその制御をCoupled Cahn-Hilliard 方程式系(以下CCHモデル)を用いて実施した.このモデルは無限次元自由エネルギーの汎函数微分により得られるが,その形状は非常に多数の極小解(Local Minimum,以下LM)を有する凸凹図形であり,その形態探索は自明でない.本年度は次の3点について研究を実施した.
(1)高次サドル解の探索アルゴリズム:多様な LMを求めるのに,絨毯爆撃的に求めるのは効率も悪く,またポテンシャル形状の情報もほとんど得られない.代わりに不安定度の高いサドル解を見つけ,そこから下流を見ることで,より低い不安定度のサドル解,そしてLMの探索が可能となる.本年度はまず非局所項がないCCHモデルを採用し,1次元の場合に,複数のサドル候補を見つけた.これらを手がかりに k-saddle法による数値探索さらにポテンシャルの大域像を得るめどがつけられた.
(2)構造保存型数値アルゴリズムの開発:(1)で述べた非局所項がない CCHモデルに対してエネルギーの単調減少性を保証するアルゴリズムを開発した.これにより正確にポテンシャル内での軌道の挙動を記述することが可能となった.
(3)実験環境と時定数比の関係:自由エネルギーのパラメータには具体的な実験環境(圧力,初期濃度等)のデータは含まれていないが,実験結果はそれらに大きく依存する.本提案では実験設定に深く関わると考えられるパラメータ「時定数比」(2つの未知関数の時間微分の前の定数比)に着目し,非局所項がないCCHモデルに対して,それがどのようにダイナミクスに影響を与えるか考察した.結果として(1)で述べたサドル解を仲介して,時定数比によりダイナミクスが切り替わり,最終的に得られる LMの推移とその分類が可能となった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的であった,高次サドル解の発見,解の単調性を保証する構造保存型数値アルゴリズムの開発,そして時定数比と実験環境の対応について,第一段階として非局所項がないCoupled Cahn-Hilliard 方程式系について,1次元の場合に一定の成果を得ることができた.さらに高次サドル解の探索(k-saddle法)については,高次元も含め,このモデル方程式に適用するための準備が整えられた.

今後の研究の推進方策

(1)自動微分の活用:一般にサドル探索では,漏れなく重要なサドルを見つけることは至難の技である.その効率化を図るため,いくつかの手法があるが,自動微分はその一つである.これによりサドル探索の加速化を進める.より簡単な 1次元Allen-Cahn 方程式においては,その有効性は確認済みである.
(2)構造保存型数値アルゴリズムの開発:非局所項を含めた方程式系に対して,エネルギーの単調減少性を保証するアルゴリズムを開発する.これにより信頼性の高い計算が可能となり,とりわけ自由エネルギーの形状探索,とくに高次サドル解からの軌道追跡を記述する上で大きな役割を果たすと期待される.
(3)時定数問題:微粒子形状を記述する変数とその中でのミクロ相分離を記述する変数の間の時定数比を網羅的に探索する.既に非局所項がない場合については,一定の成果が出ているが,それを精緻化すると同時に非局所項を組み込んだ場合を考察する.また親水性,疎水性など溶媒との関係を記述するパラメータを動かし,時定数比との関係を調べる.
(4)高次元問題:(1)ー(3)の研究進捗に応じて,2次元以上の場合について議論を可能な限り拡張することを試みる.

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた計算機クラスターについては,昨年度は1次元計算が主な研究対象となり,現有の計算機で当面対応可能となったので購入しないことになった.よって一部次年度使用額が生じた.本萌芽研究のテーマが広がり,新たな研究協力者との議論が進行している.そのための研究打ち合わせ及び本研究課題の成果発表の費用として使用する予定である.

備考

研究代表者ホームページ:西浦廉政研究室コモンズの数学

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Controlling the Formation of Polyhedral Block Copolymer Nanoparticles: Insights from Process Variables and Dynamic Modeling2024

    • 著者名/発表者名
      Avalos Edgar、Teramoto Takashi、Hirai Yutaro、Yabu Hiroshi、Nishiura Yasumasa
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 9 ページ: 17276-17288

    • DOI

      10.1021/acsomega.3c10302

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Morphologies at nanoscale in materials science2024

    • 著者名/発表者名
      Yasumasa Nishiura
    • 学会等名
      Turing Symposium on Morphogenesis, 2024 -A Panorama in Turing’s Sight-
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] A particle method based on Voronoi decomposition for the Cahn-Hilliard equation2024

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Furihata
    • 学会等名
      Banff International Workshop "Structured Machine Learning and Time-Stepping for Dynamical Systems"
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 相分離問題の粗視化のための particle dynamics model2023

    • 著者名/発表者名
      降籏 大介
    • 学会等名
      第28回計算工学講演会
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/nishiura_labo/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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