研究課題/領域番号 |
23K17707
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 亮吏 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (00379819)
|
研究分担者 |
山中 正博 岡山大学, 惑星物質研究所, 助手 (50711868)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
キーワード | 安定同位体 / 遷移元素同位体 |
研究実績の概要 |
本課題では、地球外物質や初期地球物質から生命の痕跡を探査するための基礎的研究を行う。水素、窒素、炭素などの安定同位体は、生命代謝活動による特有の同位体分別を生じるため、生命痕跡探査の強力なツールとなり得る。しかし、これらの元素の同位体比は変質反応や光化学反応等による二次的改変が生じている可能性があるため、これらの影響が少ないとされる遷移金属元素の安定同位体を用いて、生命・非生命起源分別過程を判読するためのツールを開発する。本研究では、質量分析計を用いた遷移金属元素同位体分析方法の高精度化、様々な条件下で行うシアノバクテリア培養実験、および天然試料の分析を中心に研究を行い、主に遷移金属元素を用いた生命・非生命反応過程の解析を目的とする。 2023年度は、地質試料中から、第一遷移元素金属のうち複数の安定同位体を持つ、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、および関連する元素として、亜鉛、ガリウムをイオン交換法により連続的に分離する方法を開発した。さらに、すでに研究代表者と研究協力者により開発したクロム、ニッケル同位体分析法に加え、銅、亜鉛、ガリウム同位体分析法を開発した。地球大気への酸素供給源として重要な役割を果たすシアノバクテリアの培養実験も行い、模擬太古代海水中の遷移元素金属量を変化させた条件でのシアノバクテリアの増殖率と代謝活動の影響を考察した。このほか、クロム同位体が記録する、鉱物‐流体反応過程に関する研究も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は遷移金属元素同位体分析方法の開発と高精度化および生物‐非生物反応による元素・同位体分別過程の解析を中心に研究を行っている。概要にも記述した通り、これらの研究内容について、計画通りに進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、シアノバクテリアの培養実験生成物および天然試料の遷移金属元素の濃度と安定同位体の分析を通じて、これらの元素が地質試料における生命起源と非生命起源の識別に役立つかどうかを評価する。また、遷移金属と、生命体の主成分である水素、炭素、窒素、酸素との相互作用に関する生命代謝活動の影響についても評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2024年度には当初予定していた予算を越える支出が見込まれるため、2023年度予算の一部を次年度に繰り越した。また、2023年度に旅費を用いる予定だった学会への参加が2024年度に変更になったことと、予定していた消耗品費の一部が他の予算で支払うことが可能となったこと等により、研究自体は予定通り行うことができた。
|