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2023 年度 実施状況報告書

光駆動ナノ工具によるゲノム分子解剖プラットフォームの実現

研究課題

研究課題/領域番号 23K17737
研究機関香川大学

研究代表者

寺尾 京平  香川大学, 創造工学部, 准教授 (80467448)

研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
キーワード生体分子加工 / マイクロ・ナノデバイス / バイオナノテクノロジー / 微細加工
研究実績の概要

本研究は、バルクでしか扱うことの困難な染色体を1分子レベルで解析するための分子解剖プラットフォームを実現する。狙った1細胞から染色体を分離し、標的部位を回収・解析する技術を実現することで、これまで生化学的手法に頼っていたゲノム解析に、機械工学的なアプローチによって1細胞かつ1分子解像度のイノベーションをもたらすことを目指す。従来のゲノム解析では、バルク溶液中で細胞集団から抽出した染色体群を回収し、断片化し、解析を行う。このとき、染色体の形状などの空間情報が失われるとともに、無数の細胞集団から得られた平均化された情報しか得られず、個々の細胞毎の差異が消失するという根本的課題がある。染色体の複雑な立体構造やエピゲノム修飾は、細胞毎に異なっており、それが、1細胞毎の機能と密接に関わることから、多種の細胞群からなる協調的な臓器機能や、がん・個体の発生過程において重要な役割を果たすことが知られている。しかし、特定の1細胞から染色体を構成するDNA分子までシームレスに処理して解析することは極めて困難であり、未だ実現されていない。そこで、本研究は、光で駆動されるナノ構造体を染色体加工の「工具」、マイクロ流体デバイスを「加工台」として用いることで、超微細領域でのピンポイント加工を実現し「ゲノム分子解剖」プラットフォームを創出することに取り組んだ。本年度は工具となるナノ構造体の作製に関して、金属膜形成・表面修飾のそれぞれの方法による機能化に取り組み培養細胞を用いて機能を試験した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は、バルクでしか扱うことの困難な染色体を1分子レベルで解析するための分子解剖プラットフォームを実現する。本研究は、光で駆動されるナノ構造体を染色体加工の「工具」、マイクロ流体デバイスを「加工台」として用いることで、超微細領域でのピンポイント加工を実現し「ゲノム分子解剖」プラットフォームを創出することを目指している。本年度は工具となるナノ構造体の作製に関して、金属膜形成・表面修飾のそれぞれの方法による機能化に主に取り組んだ。金属膜形成については、ナノ構造体の一部に金属膜を形成し、光で操作しながら電気的に細胞を破壊加工する前段階まで到達したが、細胞に対しての評価実験は未だ簡易な検討実験に留まっている。また、表面修飾により細胞内にナノ構造体を取り込ませる実験については、細胞を用いた実験を開始し、細胞への取り込み過程を可視化することに成功したが、染色体へのアプローチまでは確認できていない。こちらについては、引き続き培養細胞を主に使用して、染色体加工の実施に向けた評価実験を進める計画である。マイクロ流体デバイスについては、本年度はフォトリソグラフィーや3Dプリンタによる造形を試験し、主に加工法の評価に取り組んだ。来年度主に実デバイス開発に取り組む計画である。

今後の研究の推進方策

様々な3次元微細加工技術が実用化されているが、複雑な3次元ナノ構造を一括大量作製する技術は未だ実用化されていない。それに対し、本研究では、光の回折や近接場を利用した紫外線リソグラフィにより3次元ナノ構造を数百万個の単位で一括大量作製し、構造表面に酵素や抗体を固定することで機能化されたナノ構造体を開発する。ナノ構造体の表面の機能化についてこれまで、金属による機能化や化学修飾を新たに実施しており、今後、細胞を使用した評価実験を進める計画である。
工具の開発に加えて、標的細胞の位置決めと細胞周囲の微小溶液環境の置換を可能にするマイクロ流体デバイスを、分子解剖の加工台として一体的に開発する。本プラットフォームを、光学顕微鏡と統合することで、リアルタイムイメージングと光操作が可能になる。したがって、オペレーターが顕微鏡像を見ながらその場でリアルタイムで分子解剖を実施できる。本ナノ工具を使い、加工台となるマイクロ流体デバイス内で標的の1細胞から染色体を抽出し、標的部位を切断回収する手法を確立することで、どの細胞の、どの染色体の、どの位置が、どのような塩基配列・化学修飾・構造を持つか1細胞1分子解像度で明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当初年度末に計画していた細胞実験を次年度に実施することとしたため、それに関連する金額を次年度に使用する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] CNRS(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CNRS
  • [学会発表] IN-VITRO MICROFLUIDIC MODEL OF SEPSIS-ASSOCIATED ACUTE KIDNEY INJURY WITH SINGLE CELL IMAGING2023

    • 著者名/発表者名
      Yuya Araki; Tetsuya Koyama; Hidekuni Takao; Fusao Shimokawa; Daisuke Nakano; Kyohei Terao
    • 学会等名
      The 22nd International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems
    • 国際学会
  • [学会発表] Two Dimensional Micronozzle Array: Fabrication and Its Applications to Biosample Manipulation2023

    • 著者名/発表者名
      Kyohei Terao
    • 学会等名
      International Conference on Physics and Its Applications
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 抗体修飾光駆動ツールを用いた1 細胞組立プラットフォームの開発2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤拓海,森駿太郎,高尾英邦,下川房男,寺尾京平
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] マイクロデバイスによるiPS細胞胚様体の局所分化誘導2023

    • 著者名/発表者名
      阿部祐馬, 楠直人, 豊田太郎, 西田光徳, 佐藤成弘, 高尾英邦, 下川房男, 寺尾京平
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] iPS細胞胚様体の局所分化誘導技術の開発2023

    • 著者名/発表者名
      阿部祐馬, 楠直人, 豊田太郎, 西田光徳, 佐藤成弘, 高尾英邦, 下川房男, 寺尾京平
    • 学会等名
      第40回「センサとマイクロマシンと応用システム」シンポジウム
  • [学会発表] iPS 細胞の分化誘導環境を探索する微小溶液環境区画化デバイスの開発2023

    • 著者名/発表者名
      深井 大暉, 豊田太郎, 高尾英邦, 下川房男, 寺尾京平
    • 学会等名
      第40回「センサとマイクロマシンと応用システム」シンポジウム
  • [産業財産権] 空間情報付与シート、空間分画装置、および画分断片回収方法2023

    • 発明者名
      寺尾京平、植田光貴、平井大地
    • 権利者名
      寺尾京平、植田光貴、平井大地
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2023-189899

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公開日: 2024-12-25  

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