研究課題/領域番号 |
23K17751
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 和利 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10563827)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | THz級電磁波 / 光電変換 / フォトミキシング / フォトダイオード |
研究実績の概要 |
波長切り替えと遅延合分波回路による実効的な二光波生成という新奇コンセプトのもとで融合し、さらに波長切り替えパターンのバリエーションによりTHz波に様々な変調が施されるという独創的技術に立脚した、全く新しいTHz波生成とこれを用いたTHz波通信の探索的研究を行った。具体的には一つの波長可変レーザだけで変調されたTHz級電磁波を生成する新技術の創成を目的とし、高速波長可変レーザとして、ピコ秒オーダの波長変化が可能な反射型トランスバーサルフィルタ(RTF)レーザを用いて二光波の生成を行った。レーザ光周波数を時間dtごとに交互に切り替え、光ファイバで構成した遅延量dtの遅延合分波回路に通過させると、もとの波長切り替えパターンと、それからdtずれたパターンが重なり、光ファイバ内には常に波長の異なる二光波が存在することになる。このdtを2nsとし二光波をフォトミキシングすることでTHz波の生成実験系を設計した。さらに周波数変動が1GHz以内となるTHz波生成のために、独自に構築した非線形応答理論を用いたピコ秒オーダの波長制御技術を適用し、周波数を安定化したTHz波生成系を構築した。 実験では二光波の光周波数差を300GHzに設定して、RTFレーザの波長切替を行い、二光波を高速フォトダイオードに入力しフォトミキシングによりテラヘルツ波を発生する実験を行った。その結果周波数300GHzの電波を途切れなく連続的に生成できることを実証した。 これら研究成果を学術論文1件、国際会議1件、国内学会5件発表し、このうち国内学会発表に対して学術奨励賞を2件受賞するなど、得られた成果に対して大きな反響を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目に実施予定であったテラヘルツ波発生を1年目で実現したから。また研究成果への反響が大きく、2件の表彰を受けたから。
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今後の研究の推進方策 |
二つのレーザと光変調器の機能を一つの波長可変レーザで置き換えたTHz級無線通信の実証実験を行う。強度変調ではレーザ波長変化時間と符号誤り率の関係から、Beyond 5Gを想定した100Gbit/s級高速変調に要求されるレーザ性能を明らかにする。周波数変調では多値化を検討し、強度変調のさらに2倍~4倍(200~400Gbit/s)の極限通信速度の可能性を探る。パルス変調では応募者がすでに構築し1Tbit/sまでの繰り返しパルス波形測定が可能な技術を活用して、レーザ波長変化時間と実現可能な最短パルスの関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたテラヘルツ波発生実験において、実験構成の改良により予想よりも高い光電変換効率で実現できたため、電気アンプなどの電子部品が不要となり、その分の物品費が削減できた。節約した研究費は次年度で行う予定の研究をさらに先に進めるための実験消耗品の購入に充てる。具体的には、当初計画では二値変調の実現を目標にしていたが、多値変調へと目標を高くし、多値変調に必要な光デバイス、光学素子、高周波測定部品の購入に充てる。
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