研究課題
火山の浅部で発生する水蒸気噴火は、規模が小さい現象であるが、その切迫度を予知することが困難である。本研究では、水蒸気を高比抵抗体として人工電磁探査で直接検出しモニターすることを目指す。人工電磁探査システムを水蒸気噴火で知られる草津白根火山の湯釜火口近傍に展開した。送信源は、湯釜火口の5km南方の地点に南北0.5km東西1km長の電流ダイポールである。送信信号は、ほぼ対数等間隔になるような離散的な8周波数からなるサイン波を合成している。自然電磁場のノイズの周波数依存性を考慮して、送信する周波数ごとの振幅は低周波数に向けて大きくなるようにした。南北及び東西の送信ダイポールの周波数セットは、僅かに異なりそれぞれ0.2Hz~46.1 Hz, 0.3~46.3Hzの周波数範囲で送信とした。波形は10秒繰り返しとし、8日間繰り返し送信した。信号波形はGPSに同期して制御され、送信した全周波数について、8日間で0.1度以内の精度で保たれた。受信機での電磁場の時系列から、送信信号に対応する電磁応答を求めるために、重み付きスタッキングを実施することによって、ノイズレベルの高い時間窓の寄与を低くすることができた。全観測点、全周波数について、誤差2%以下の応答関数を取得できた。ついで、3次元比抵抗構造解析コードを開発し、これらの観測データを解析し、湯釜火口周辺の比抵抗構造を求めることができた。さらに、広い範囲の水蒸気層を迅速にマッピングすることを目指して、ドローンによる観測システムの開発を進めた。ドローンに搭載する軽量の鉛直成分コイルを自作し、テスト測定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
草津白根山における人工電磁探査は順調に進行している。計測システムおよび、データ処理プログラム、3次元構造解析プログラムが完成し、水蒸気噴火をする火山の精密観測、精密モデリングが可能となった。また、空中探査のためのドローンに搭載する磁気センサーと記録システムについても、フィールドテストが進んだ。
草津白根山における人工電磁探査について、繰り返し観測を行い、高精度データを通じて、3次元比抵抗構造の時間変動を捉えるためのインバージョンモデル計算を高度化する。空中探査のためのドローンに搭載する磁気センサーと記録システムについては、機器の軽量化を図り、草津白根火山での実用観測を目指す。
当初購入予定していた大型ドローンについては、分担者の所有するドローンを使用することが可能となり、購入を延期している。また、ドローン用磁気センサ-については、当面は自作することとしたため、購入を延期している。一方、ドローンに搭載予定の記録計と互換性のある地上用電磁場5成分観測装置(NTシステム製MT観測装置)を購入する必要が生じた。以上を相殺して、次年度使用額が生じたが、次年度に有効に活用する予定である。
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