研究課題/領域番号 |
23K17809
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小俣 孝久 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80267640)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | プロトン伝導体 / リン酸塩ガラス / 中温作動型燃料電池 |
研究実績の概要 |
(A)ポリリン酸ガラスHO1/2-MOx-PO5/2 の作製:プロトン伝導性ガラスとしての知見に乏しいM=Ge, Ga, Tiにフォーカスした。ガラス化範囲を調査し,Ge系ではHO1/2が30~40mol%,GeO2が12mol%以下の広い範囲でガラスが得られることを明らかとした。Ga系,Ti系については3元系ではガラスが得られなかったので,HO1/2-GeO2-PO5/2ガラス中のGeO2をGeO3/2,TiO2で置換しガラス化範囲を調査した。その結果を踏まえ,ガラスが得られる35HO1/2-xGaO3/2-(12-x)GeO2-53PO5/2(x≦10)および30HO1/2-xTiO2-(10-x)GeO2-60PO5/2(x≦3)ガラスにより,GaとTiの効果を調査できることがわかった。 (B)ポリリン酸ガラスの熱安定性の研究:35HO1/2-xGeO2-(65-x)PO5/2系ではx=5ではガラス転移点(Tg)が135℃で,GeO2含量とともにTgは高温となり,x=12ではTgは200℃となった。ラマンスペクトルによりこの系のガラスが鎖状リン酸イオンからなることがわかったので,GeO2の添加により鎖状リン酸イオン間の架橋が発達し,Tgが高温化した,すなわち,高温での安定性を向上したことがわかった。35HO1/2-xGaO3/2-(12-x)GeO2-53PO5/2のTgは,GaO3/2含量によらず約200℃で一定であった。30HO1/2-xTiO2-(10-x)GeO2-60PO5/2では,TiO2含量が増加すると僅かに低下する傾向も見られたが,いずれも約200℃であった。これらの結果から,高温での安定性の観点では,GaO3/2やTiO2はGeO2と同様に鎖状リン酸イオン間を架橋し,熱安定性を向上する効果があることが明らかとされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたヘテロ元素のうち,プロトン伝導性に関する知見の少ないGe, Ga, Tiについて,ガラス化範囲を決定できている。TiおよびGaの場合では3元系ではガラス化しなかったので、GeO2を添加した4元系でガラスを得ている。得られたガラスについてはガラス転移点を決定し、熱安定性も評価済みである。プロトン伝導度についても一部については既に評価を進めており、計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
3元系ではガラス化しなかった系においては4元系に拡張することで試料を用意しているので、プロトン伝導性を網羅的に評価し、研究目的の達成に向けて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は計画通り進捗しており、また、本年度の残額も小額であったたため、次年度に繰り越すことで残額の使用価値を向上するため。
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