研究課題/領域番号 |
23K17822
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
真部 研吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (80848656)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 3Dプリント / 表面濡れ性 / 界面 / バイオミメティクス / 超撥水 |
研究実績の概要 |
本研究においては、脱炭素・循環型社会の実現に向けて期待される3Dプリント製造において、表面機能性を追究した3Dプリンティングによるメンテナンスフリー表面を実現するために、バイオミメティック高耐久超濡れ構造体を創出することを目的としている。代表的なメンテナンスフリー表面としては超撥水表面があり、防汚や防錆、また近年では資源再利用の観点からも汚れの定着阻害の重要性が高まっている。超撥水は低表面エネルギーとマイクロ・ナノスケールの表面粗さを有し、液体と固体表面の接触を最小限に抑えることが必要である。しかし、その微細構造ゆえに、機械的な負荷がかかることで局所的に高圧力を受けて壊れやすく、超撥水表面と機械的強度は互いに相容れない表面特性として扱われている。そこで本研究では、自然界、特に生物を模倣するバイオミメティクスからスケールと機能の異なる材料を複合した構造体を作製するという解決手法を提案するものである。本年度は、アルマジロの甲殻に発想を得て、FDM3Dプリンティングを用いて溶融樹脂による装甲壁を構築した。アルマジロの様な六角形だけでなく、円形や三角形の最密構造を表面に作製し、構造と形状に由来する耐久性を評価した。装甲内に水の忌避特性に優れた超撥水ナノ粒子とそれらの装甲と粒子を接着させ、衝撃吸収が期待できる樹脂による相互接合界面を形成し、超撥水構造体を得た。作製した本構造体において摩擦試験を行ったところ、100gの荷重、往復摺動100回に対して、構造の大きさに依存した超撥水能力の維持性能が示された。耐久性を示したサンプルでは、摩擦試験前後で接触角の減少が小さく、超撥水性となる水滴接触角150度以上を示しており、本研究の主要コンセプトが高耐久性表面を実現する基本構造として有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた3Dプリンティングによる構造体の作製及び各スケール・機能を有する材料の複合化を実施でき、さらに構造体の有する形状の比較やメンテナンスフリーに繋がる超撥水表面の構築が完了している。以上から、“おおむね順調に進展している。”といえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画が順調に進展しているため、研究計画書通りに今後の研究を推進していく。まずは、今後の研究の推進の焦点として、素材の選定と3Dプリンティングにより造形された構造と表面の濡れ性、及びその耐久性に関しての理論化を実施し、実験と理論による体系化を目指す。また、その中でより構造安定性や表面の耐久性の向上を目的としたトポロジーの最適化を行い、これまで以上の性能を発揮する表面を創生していく。
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