研究課題/領域番号 |
23K17828
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長谷川 靖洋 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60334158)
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研究分担者 |
小峰 啓史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90361287)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 無次元性能指数 / 抵抗率 / ゼーベック係数 / 熱伝導率 / TDIS法 |
研究実績の概要 |
熱(温度差)から電気への直接エネルギー変換を可能にする熱電変換現象に着目している。そのエネルギー変換効率はゼーベック係数S[V/K],抵抗率ρ[Ωm],熱伝導率κ[W/mK]に、絶対温度T[K]を乗じた無次元性能指数zT[-](=S^2T/(ρκ))を用いて見積もられている。現状ではzT~1程度,エネルギー変換効率は約10%であり、ナノ構造など21世紀の物理と技術を採り入れた高いzTを持つ熱電変換材料の開発が進められている。 従来の定常熱伝導方程式を元にすると、熱電変換材料のzTを評価する際、ゼーベック係数Sと抵抗率ρは直方体形状を用いた電気物性測定,熱伝導率κは円盤状形状を用いた熱物性測定に適した2つの異なる材料を用意し、別々に各物性測定が行われ、定義式よりzTを決定している。再現性や信頼性の観点から同一材料を用いた評価を行うべきであるが、画一的な測定手法が開発されていないことが熱電変換材料開発・評価の大きな障害となっており、zT評価法の確立が急務である。ここでzTの単位系が無次元であることに着目する。物理的に4つの物性値が密接に関係していることは明らかである一方、特定の物性値の比でzTを記述することができることを暗示しており、最も測定が簡便な抵抗値RもしくはインピーダンスZ(ω)の比を用いてzTを表現できれば、確度の高いzT評価が可能となる。本研究では、熱電変換材料中に電流(電荷)と共に輸送されるペルチェ熱を測定プローブとした新しいTime Domain Impedance Spectroscopy(TDIS)法を提案・実証し、熱電変換材料特有の現象を用いた新しいzT測定手法の提案・実証を行い、国際標準化までの仕様策定を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TDIS法の理論モデルは明確化され、Π型熱電モジュールを用いて抵抗率ρならびに無次元性能指数zTが決定できるだけで無く、無次元性能指数zT>0.005であれば、定量的にも評価できることを実験的にも示した。ただし、従来のTDIS法理論モデルは、抵抗率ρならびに無次元性能指数zTを決定することは出来でも、ゼーベック係数,熱伝導率の決定は困難であった。そこで、電流リード線を通して発生する熱リークを積極的に利用することで、全ての熱電パラメータが決定できるモデル計算を行い、そのΠ型熱電モジュールを用いた実証実験を行った。結果として、全ての熱電パラメータがTDIS法ならびに電流リード線への3ω法を組み合わせることで決定であることも明らかになった。熱リークは従来から課題として挙げていたが、逆説的に利用することで、全ての熱電パラメータが決定できるという予想外の結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
Π型熱電モジュールを用いた全熱電パラメータ決定は現在進めており、温度依存性などから定性的・定量的な評価を進めていく。次に、純粋な熱電変換材料を用いた実証実験が残っており、熱リークに関する理論モデルがある程度構築されていることもあり、全体的な見通しは明るい。ただし、実験を進めるにあたり熱制御は大きな問題となり得るため、理想的な実験条件をどのように構築していくか定量的な評価を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験研究を進める際、低温状態を作るためにクライオクーラーを利用している。2023年度中にメンテナンスを行う予定をしていたが、実験で利用しているクライオクーラーが廃盤となり数年が経過し、故障部品の入手が困難となった。現在は稼動している状態ではあるものの、いつ故障しても判らない状態でもあるため、クライオクーラーのメンテナンスから交換という判断をした。ただし、クライオクーラーの納期が6ヶ月以上となったことから、2024年度中での交換となったため、予算を繰り越した。
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