研究課題/領域番号 |
23K17831
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松永 克志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20334310)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 電子状態計算 / バイオセラミックス / 界面 |
研究実績の概要 |
生体骨や歯のエナメル質等は無機/有機の複合材料であり、リン酸カルシウム結晶と有機分子の界面構造や両者の間で生じる相互作用の解明が、生体材料設計の重要指針となる。リン酸カルシウムと有機分子との複合材料として期待されている生体材料の一つが、有機分子により修飾されたリン酸八カルシウム(OCP)である。このOCP結晶に特有の物性として、様々な有機分子を結晶内に取り込むことが可能であり、有機分子に対する選択性も報告されてきた。しかしその分子修飾選択性の起源はおろか、具体的な結晶中の原子配列さえ未解明である。そこで本研究では、有機分子として鎖状ジカルボン酸イオン分子であるマロン酸を対象とし、これを含有するOCP結晶の最安定構造を、第一原理計算とデータ駆動科学的手法を用いて検討した。これまでの研究では、データ駆動科学的手法として、ベイズ最適化および粒子群最適化の2つの手法を採用し、両手法による計算結果の相互比較から、計算結果の妥当性を評価した。さらに、実際のOCP結晶のジカルボン酸分子を含む層には、水分子も含まれる可能性があるため、陰溶媒モデルの適用も検討した。その結果、両最適化手法とも同等な計算結果となり、計算結果に対するデータ駆動科学的手法の依存性は見られなかった。また、陰溶媒モデルを適用しない場合、実験格子定数を大きく過小評価する結果となった。そこで陰溶媒モデルを適用して同様な計算を実施した結果、得られた格子定数は実験報告と良く一致しており、本研究手法の妥当性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、第一原理計算とデータ駆動科学的手法を用い、ジカルボン酸を水和層に導入したOCP結晶の電子・原子レベル構造の解明を目的としてきた。これまでの研究では、鎖状ジカルボン酸イオン分子として分子量の最も小さいマロン酸を対象とし、OCP結晶の水和層に挿入したときの最安定構造を探索した。データ駆動科学的手法として、ベイズ最適化および粒子群最適化の2つの手法を採用し、両手法による計算結果の相互比較から、計算結果の妥当性を評価した。さらに、実際のOCP結晶のジカルボン酸分子を含む層には、水分子も含まれる可能性があるため、陰溶媒モデルの適用も検討した。その結果、両最適化手法とも同等な計算結果となり、計算結果に対するデータ駆動科学的手法の依存性は見られなかった。また今回得られた格子定数は実験報告と良く一致しており、本研究手法の妥当性を確認することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、データ駆動科学的手法については粒子群最適化手法を採用し、マロン酸より大きな分子量の鎖状ジカルボン酸イオン分子のOCP結晶への挿入を検討する。また、イオン修飾の熱力学的安定性評価方法についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算条件の基礎的検討においては、比較的小規模な計算モデルを用いた方が効率がよい。したがって、既存設備の計算機を主に使用し、予定していた大型計算機使用料は発生しなかった。次年度以降に使用予定としている。
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