研究課題/領域番号 |
23K17835
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 功 京都大学, 工学研究科, 教授 (70183861)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | マテリアルズ・インフォマティクス / テンソル分解法 / 機械学習モデル |
研究実績の概要 |
今年度は,まず化学組成を網羅した系統的な第一原理計算による化合物生成エネルギーと,化学組成だけでなくプロセス条件を網羅した並列合成実験による初期データを獲得した.その際,合成実験の成功データだけでなく失敗データをも均質に収集した.探索空間におけるデータの均質性は,意外性のある発見を可能とする予測性能の高いモデルを構築するために不可欠である. また,初期データを元に,機械学習モデルにより探索候補となる化学組成を絞り込んだ.具体的には,ラボ設備の制限から毒性の高い元素を除外し,主に酸化物を対象とし,常法として粉末法と錯体重合法による合成実験を実施した.結晶相の同定には,現有のサンプル自動交換装置付の粉末X線回折計を用いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時に想定していたよりも多くのデータを収集することができ,想定したよりも良い機械学習モデルが得られた.当初の想定以上に進捗していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,化学組成だけでなくプロセス条件を網羅した並列合成実験データの収集を行う.また,それと並行し,機械学習モデルにより探索候補となる化学組成を絞り込み,予測された成功確率のスコアが高い実験条件で,ピンポイントに新奇化合物合成を試行する. この検証データを追加することで,モデルの精度を逐次的に向上させる.用いる機械学習法としては,代表者らが開発したテンソル分解法による推薦システム (Phys. Rev. Mater. (2018))を利用するが,必要に応じて適切な特徴量を利用した推薦システムを併用する.その際,並列実験の結果はスコア化し,失敗の度合いについてもスコア化する.同じ失敗結果であっても,目的と異なる化合物が合成されている場合と,結晶性化合物が全く合成されなかった場合などは区別する必要があると想定しているが,この点については実データに基づく検討が必要である.また,今年度は,全要素数が10^6から10^9程度となる合成スコアをテンソル化し,タッカー法など先端的なテンソル分解法を活用して,成功確率の高い実験条件を見出す. 本研究の最終段階は,成功確率が高いと予測された実験条件での新奇化合物合成の検証であり,詳細な実験と共に第一原理計算を実施する.この段階で合成実験に成功することを期待しているが,計画通り進まなかった場合でも,その失敗データを並列実験データに追加し,合成条件推薦システムをアップデートすることで,予測精度を逐次的に更新させ,成功確率を向上させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた大型計算機の利用契約時期が合わず、既存の計算機を利用することで研究を進めたため。 また、日程調整がつかず、予定していた国際学会への参加が無くなったため。
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