研究課題/領域番号 |
23K17836
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 博之 京都大学, 工学研究科, 助教 (50727419)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 新規物質探索 / 機械学習 / 第一原理計算 / 合成実験 |
研究実績の概要 |
本研究では、計算データベースと合成データベースを統合的に用いて、「熱力学的に安定もしくは準安定な組成は何か」と「目的物質をどのように合成するか」を同時に予測可能な手法を開発することを目標としている。2023年度は、計算データベースの構築及び整理のために、過去に行った10万件程度の第一原理計算の計算条件と計算結果を見直し、熱力学的安定性に影響が大きい形成エネルギーやConvex hullからのエネルギーなどを系統的に評価を行った。次に、それらの結果を構成陽イオンとその構成比、および構造最適化後の結晶構造を表現するいくつかの指標によってテンソル型のデータベースに成型した。テンソルの各要素には形成エネルギーを用いた場合と、Convex-hullからのエネルギーを用いた場合の両方を試した。Tucker分解と呼ばれる低ランク性を仮定したテンソル分解法を用いることでこのテンソルから陽イオンや結晶構造をベクトル型記述子にし、Ward法を用いた樹形図にすることでそれぞれの類似度を評価した。その結果、例えばアルカリ土類金属元素の陽イオンでは、MgとCa、SrとBaがそれぞれ比較手類似しているというような結果が得られた。これは、周期表上の座標やイオン半径による単純な指標では段階的な変化として表現されうるものであるが、本手法により酸化物の安定性への寄与を定量的にベクトル化できたことを示している。同様に結晶構造に関しても、群論や幾何学的な観点だけではなく、酸化物イオンを含むときの結合性と安定性を考慮に入れたベクトルとして表現できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、計算データベースと合成データベースを統合的に用いて、「熱力学的に安定もしくは準安定な組成は何か」と「目的物質をどのように合成するか」を同時に予測可能な手法を開発することを目標としている。そのうち本年度では、計算データベースの構築と、それを用いた陽イオンや結晶構造の数値ベクトル化の手法を検討を行った。本手法は合成データベースにおいてもテンソル化およびテンソル分解を用いた記述子の作成に応用することが可能であり、研究全体の進捗にとって重要な要素である。これらが滞りなく進展したため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は合成データベースの整理と、同様の手法により合成パラメータの数値ベクトル化を行う。合成成否に関係する合成パラメータのベクトルと、熱力学的安定性に関係する構成陽イオンなどの数値ベクトルを用いて、ある化学組成を特定の合成手法で合成したときに、熱力学的に安定かどうかということと、合成成否を同時に予測する機械学習モデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は本研究の効率的な遂行のためにデータベースからの記述子作成に多くの労力を割いたため、合成実験の多くは既存設備の利用で賄うことができた。次年度以降は、合成データベースの拡充のため電気炉の増設などに使用する予定である。
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