研究課題/領域番号 |
23K17837
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 秋彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (90350488)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | ガラス構造 / 擬格子面 / 電子回折 / 計算ホモロジー解析 |
研究実績の概要 |
ガラス物質は周期性のない構造を持つことから、結晶物質と比較して構造解析・構造モデリングが非常に困難である。ガラス物質の構造では、X線回折などで得られる散乱曲線にはブロードなハロー強度のみが観測され、はっきりとしたブラッグピークが見られる結晶構造とは状況が全く異なっている。本研究では、上述した問題点を解決するため、電子線をサブナノメートルスケールまで絞るオングストロームビーム電子回折法に着目し、ガラス物質の局所領域から得られる電子回折中の斑点状の強度と「擬格子面」の関係に着目し、ガラス物質の局所構造とハロー強度の関係を明らかにすることを目的としている。2023年度は、主にシリカガラス(SiO2)の局所構造とFirst Sharp Diffraction Peak (FSDP)の関係に着目した実験および解析を行った。2次元的に得られる局所電子回折パターンにはFSDPに対応する回折斑点が見られ、この解釈のために構造モデルから同様の回折パターンが得られた領域についてその特徴の詳細を調べた。その結果、電子線の入射方向に平行に柱状の原子鎖が局所領域で擬周期的に配列して擬格子面を作っている様子が明らかとなり、これがFSDPに対応する回折斑点を生み、2次元的な回折パターンを作り出していることがわかった。さらに、FSDPの裾の位置に対応する回折斑点も観察されており、これに対応する局所構造についても議論した。これらの結果は古くから議論されてきたFSDPの起源の解釈に新たな視点を与えたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ガラス物質(シリカガラス)に関してオングストロームビーム電子回折実験を行ってきており、局所構造に関する解析可能なデータを取得している。また、擬格子面の起源について、構造モデルをもとに議論した。これらのことから、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
シリカガラスだけでなく、金属ガラスも視野にいれ、電子回折計算やホモロジー解析を行う。このため、基準となる構造モデルを古典および第1原理分子動力学計算により作成する。また、オングストロームビーム電子回折実験を計算機上で再現するためのヴァーチャルオングストロームビーム電子回折法もここで得られたモデルを使って進めていく。この際、特に擬格子面を生む構造に着目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額の端数まで完全に合わせることが難しかったため、1円の繰り越しとなった。
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