研究課題/領域番号 |
23K17847
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
尹 基石 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (50701497)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 二酸化炭素のの水素化反応 / 水素酵素 / ギ酸脱水素酵素 / 細胞膜 / ギ酸生成 / 細胞と細胞膜の固定化 / 水素キャリア |
研究実績の概要 |
脱炭素社会の実現に向けた研究開発では、従来とは異なる常温常圧の低基質濃度の反応条件下でも高活性で安定な触媒を開発することが重要であります。特に、特殊な環境で生育するバクテリアの中には、常温常圧での反応において高活性と高安定性を持つ生体触媒(酵素)があるため、これまでの貴金属や有機溶媒を用いた高温・高圧反応のコストや環境負荷がある反応系を改変できることが期待されます。本研究では、Citrobacter sp. S77のグラム陰性細菌の細胞膜から高活性と高安定性の水素酵素とギ酸脱水素酵素を発見し、両酵素の精製と特性解析に成功しました。両酵素の共通点である細胞膜局在性に着目し、カーボン担体と高分子ポリマーで細胞膜を固定化し、非貴金属酵素触媒による水素駆動型CO2還元反応を構築することにより、常温・常圧反応条件下での高効率なギ酸生成系の開発に世界で初めて成功しました。本研究開発においての特徴は、生体の電子伝達と物質変換反応において根幹になる厚さ数ナノメートル(nm)の細胞膜(plasma membrane)の特性に着目し、膜表面の親水性と膜内面の疎水性の機能を、人工的なエネルギー変換デバイスの構築に生かした点です。生細胞を用いた反応系では、細胞膜による基質透過性バリアがあるため、精製酵素と比較して触媒反応が低下します。しかし、単離細胞膜では細胞膜表面で直接反応できることから、高効率かつ選択的に触媒反応系の構築が可能となります。本研究では単離細胞膜をカーボン担体と高分子ポリマーで固定化することで、H2とCO2からギ酸への変換を持続的に行うことができるシステムの開発を実現しました。固定化した細胞膜(多層カーボンナノチューブに担持し、ジェランガムをカルシウムイオンで架橋したヒドロゲルビーズ)は、少なくとも10回以上の再利用サイクルにおいてもその安定性を示しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固定化細胞膜を用いることで、常温・常圧条件下でこれまで開発された人工細胞膜触媒系と比べ、22倍以上の高活性でギ酸のみの生成に成功しました。本成果はElsevierの国際学術誌「Bioresonce Technology」とNIKKEI Tech Foresightに掲載されました。また、九州大学のTechnology Environment & Sustainabilityの研究成果として2023年11月10日にプレスリリースしました。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、細胞膜をカーボン担体と高分子ポリマーで固定化した高効率なCO2変換系の創成であり、今後その精製酵素系を用いたエネルギー変換システムの開発に役立つことが期待されます。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究最終年度の令和6年度は研究を集約して成果を上げるため、令和5年度は人件費と旅費を節約した。令和6年度の研究費は主に人件費と設備費に充てる。
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