研究課題/領域番号 |
23K17850
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (90283415)
|
研究分担者 |
山本 宗昭 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 特任助教 (50823712)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 酸化ガリウム光触媒 / 反応環境下分光分析 |
研究実績の概要 |
市販のβ相Ga2O3粉末の高エネルギーボールミルによる粉砕や,金属Gaの水中での酸化,更にはGa2O3の前駆体である硝酸ガリウムの焼成など,独自性の高い合成方法を開発しながら,Ga2O3微粒子触媒を調製した. これにより,異なる結晶構造(α,β,γ,ε,δ相など)や粒子サイズ,幾何的形態を有するGa2O3微粒子触媒の合成が可能になっただけでなく,結晶構造の異なるGa2O3結晶粒を様々な割合で接合した触媒(α/β, β/γ混相Ga2O3等)も調製することに成功した.また調製した様々なGa2O3微粒子触媒を用いて,水の光触媒的還元反応や,水を電子源とした二酸化炭素還元反応を実施し,Ga2O3の結晶構造や粒子サイズ,混相・単相の状態が反応活性に及ぼす影響について整理した. 一方,反応メカニズムを解明するために,反応基質(水やCO2分子)と光触媒との相互作用を観察するための複合型Operando測定システムの構築に着手した.試料の加熱・真空排気,反応ガスの導入,光照射など,反応環境下での分析が可能となるin-situ セルの設計開発に注力し,反応中にFT-IR測定(触媒吸着分子・反応中間体の化学状態分析)を行うことが可能になった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の光触媒合成にあまり使用されてこなかった高エネルギーボールミルによる粉砕法を応用したことによって,安定相であり表面積の小さいβ相Ga2O3の微粒子化・高表面積化に成功しただけでなく,欠陥導入による結晶構造の乱れなど不安定化が可能になった.また金属Gaの水中での酸化により低温でのGa2O3の合成が可能となったことから,高温焼成によって得られるβ相以外の結晶構造(α,γ,ε,δ相など)のGa2O3の合成が実現した.このような独創性の高い合成法を導入したことにより研究計画が順調に進んだと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度から,Ga2O3光触媒だけでなく,Ag助触媒についても新しい反応機構(Ag助触媒自身の光還元と酸化)によって反応が進行していることを検証する.清浄表面を有するサイズ制御されたAgナノ粒子助触媒を得るために,液中プラズマ法による合成に挑戦する.即ち,水溶液中にGa2O3光触媒を浮遊させておき,銀ロッド電極間にパルス電圧を印加することにより銀ナノ粒子を生成させ,触媒表面に析出させる.その際,プラズマ放電条件(パルス電圧,パルス幅,周波数)や,水温を変化させ,銀ナノ粒子助触媒のサイズや化学状態の最適化を行う.また合成中に,Agナノ粒子のサイズや化学状態を反映する光吸収スペクトルをその場測定し合成条件を制御することにより,1 nm~数十 nmまでの任意のサイズで均一なAgナノ粒子を得るための方法論を確立する. 一方、2023年度に引き続き複合型Operando分光測定システムの構築を行いながら,このシステムを利用してAg助触媒担持酸化ガリウム(Ag/Ga2O3)を対象に,Ag助触媒周辺のどこが反応を促進する「活性サイト」であるか,その局所構造・電子状態も明示すると共に,反応中間体の化学状態も調べることによって、Ag助触媒担持効果が最も反映される光触媒表面反応メカニズムを解明する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスや物資不足による装置や実験器具などの納品が遅れたことから次年度に効率的且つ集中的に使用する方が研究が進展するため
|