研究課題/領域番号 |
23K17868
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
葛谷 明紀 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00456154)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 生物発光共鳴エネルギー移動 / DNA |
研究実績の概要 |
本研究で使用する「DNA足場生物発光素子」は、Alexa Fluor594とFAMをアクセプターとして利用する生物発光素子を基本とし、特殊モノマーを使用してアミノ化などのさらなる化学修飾をDNA足場に施すことで、これらを抗体やDNAオリガミなどと結合できる「多色発光ラベル化剤」へと応用することをめざしている。 1. DNA足場生物発光素子をラベル化剤として活用する発光免疫染色法の開発:まずは、その利用場面が最も広いと期待される免疫染色法で、DNA足場生物発光素子を利用することを検討した。二重らせんのうちNanoLucを再構成する末端と反対側の末端をビオチン化したDNA鎖をDNA自動合成機で合成した。一次抗体として使用する抗チューブリンマウスIgGをビオチン化し、これに対してストレプトアビジンを介して擬二次抗体としてビオチン化DNA足場生物発光素子を結合させた。固定化したHeLa細胞に対して、これらの標識抗体を使用して免疫染色することで、細胞内の微小管からの生物発光を顕微鏡で観察することに成功した。 2. DNA足場生物発光素子を明滅光源とするマルチカラー超解像「発光」顕微鏡法の開発:DNAオリガミ上に結合したDNA足場生物発光素子からの発光を単分子顕微鏡観察するために、三角形の形状をしたDNAオリガミの各辺に、2分子ずつのDNA足場生物発光素子の結合部位を導入した。原子間力顕微鏡でDNAオリガミ全体の構造を確認すると共に、マイクロプレートリーダー上でDNA足場生物発光素子からの青、緑、赤色の発光を同時に観察することに成功し、設計通りの複合体が形成されており、DNAオリガミ上でもDNA足場生物発光素子が問題なく機能することを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固定した細胞の生物発光免疫染色に成功し、今後の多色標識へのめどがたった。DNA足場生物発光素子を明滅光源とするマルチカラー超解像発光顕微鏡法の開発についても、三角形DNAオリガミへのDNA足場生物発光素子の固定化に計画通り成功し、今後の超解像観察への準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な目標としている多色での生物発光免疫染色法を確立するために、IgG抗体へのDNA足場生物発光素子の直接的なアミドカップリングを試みる。具体的には、一次抗体として抗チューブリンマウスIgGに加えて、抗アクチンヒトIgGの標識を検討する。また、二次抗体として使用する抗マウスIgGや、抗ヒトIgGへの標識も試みる。 マルチカラー超解像発光顕微鏡法の開発については、作成に成功したDNA足場生物発光素子を結合した三角形DNAオリガミをガラス基板上に固定化し、顕微鏡で単分子観察することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた国際学会出席のための外国出張を必要経費が増大していることも鑑みて次年度に延期したことに加え、公表を予定していた原著論文のためのデータ取得が遅れたため年度内に投稿できなかった。これらはいずれも次年度使用額を使用して実行する。
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