研究課題/領域番号 |
23K17901
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
生駒 忠昭 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10212804)
|
研究分担者 |
俣野 善博 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40231592)
大鳥 範和 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20272859)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
キーワード | 三重項励起子対 / 電子交換 / スピンダイナミクス / 三重項エネルギー移動 / ゼロ磁場相互作用 |
研究実績の概要 |
三重項融合の収率のボトルネックとなっている三重項-三重項対のダイナミクスを実験と理論の両面から研究した。 実験的研究:流動溶媒中で三重項融合を調べる目的で、三重項増感剤(白金ポルフィリン錯体(PtP))と発光体(ジフェニルアントラセン(An))を溶かしたエーテル溶液について実験した。ナノパルスレーザーを用いてPtPを選択励起したときに観測される1An*蛍光強度の時刻から、励起一重項An(1An*)収量の変化を実時間観測した。観測された1An*収量の時間変化を速度論的に解析し、量子収率を見積もった。また、融合量子収率と分子拡散運動の関係を明らかにするため、粘度の著しく異なるエーテル溶媒を用いて、三重項増感による三重項融合実験を行った。また、金属ポルフィリン(MP)にアントラセン二分子が結合した三元系分子(MP-An2)を合成した。MP-An2についても同様な測定を行った。 理論的研究:モンテカルロ法に基づいた分子回転拡散のシミュレーションを行った。有限温度における混合スピン状態の波動方程式(密度行列(ρ)のリュービル運動方程式)に、変数とするスピンハミルトニアンを組み入れ、活性錯合体のスピン状態のダイナミクスを計算した。本手法を用いて、1An*蛍光の磁場効果のシミュレーションを行った。また、励起子のマルチトラッビングモデルに基づいた励起子拡散のシミュレーションも行った。これは、無定形固体における三重項融合を念頭にした理論的研究である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2024年1月1日に発生した能登沖地震によって実験装置が故障したため、著しく研究が停滞した。装置の復旧に必要な金額は、この補助金をはるかに越えているため、復旧予算の申請を行ったが審査が滞っており、復旧に必要な財源の目途がまだ立たないまま実験中断が続いている。また、MP-An2が、分子内および分子間三重項融合を起こしており、測定結果の解析に難航していることも遅滞している理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
被災した測定装置を復旧させたのち、以下の研究を行う。 1. PtPとAnの混合系における測定結果の解析を行い、反応量子収率に対する粘度依存性を明らかにする。 2. MP-An2の測定結果の解析を行う。励起子拡散を必要としない三重項融合の可能性を明らかにする。解析結果を踏まえて、新規三元系分子の設計と合成を行う。 3. 分子拡散のない固体状態における三重項融合を研究する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な設備の中に、2024年1月1日の能登沖地震で被災した設備があった。装置の被災によって、2024度に実施できなくなった工程があった。装置の復旧にかかる費用と時間を検討した結果、2023年度予算の一部を2024年度に繰り越すことにした。
|