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2023 年度 実施状況報告書

プロペラ型ヘテロアセン合成とその物性解明への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 23K17917
研究機関岡山大学

研究代表者

光藤 耕一  岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (40379714)

研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
キーワードプロペラ型ヘテロアセン / プロペラン / ヘテロアセン / カルベン / ヘテロチエノアセン
研究実績の概要

本研究の目的は、三次元構造を有する芳香族性の機能性分子としてプロペラ型分子に着目し、「シクロプロパン環が縮環した新規プロペラ型ヘテロアセンを合成し、その物性を解明すること」である。シクロプロパン環はsp3炭素で構成されるにもかかわらず、その歪んだ構造から疑似π結合性と芳香族性(σ芳香族性)を持つことが知られる。 共役系と芳香族性を保ちつつプロペラ型分子を構築するには、多環芳香族中の二重結合にシクロプロパン環を縮環すればよいと考え、本研究に着手した。このようなプロペラ型分子(プロペラン)の合成研究の先行研究として、反応性の高い二重結合部位にジブロモカルベンを作用させる手法が報告されているが、適用できるのは非芳香族か歪んだ芳香環に限られ、その物性も不明だった。
そこで、母骨格となるヘテロアセンとしては、高い半導体特性を有することが分かっているベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(BTBT)とベンゾフロ [3,2-b]ベンゾフラン(BFBF)を用い、BTBTまたはBFBFにジブロモカルベンを作用させたところ、想定通り、シクロプロパン構造を有する新規プロペラ型ヘテロアセンを構築することに成功した。また反応後、還元することで、脱ハロゲン化した新規プロペラ型ヘテロアセンを得るこのにも成功した。得られた分子群については全て結晶構造解析にも成功しており、期待した通り、密なパッキング構造を有する事を明らかとするとともに、分子間の移動積分も算出し、高い分子間電子伝導が期待できることも見いだした。紫外可視光吸収スペクトルや電気化学的特性評価とDFT計算・ACID計算なども行い、新規プロペラ型ヘテロアセンが期待通り、芳香族性を示すプロペラ構造体である事を示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

申請書にて提案したベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(BTBT)とベンゾフロ [3,2-b]ベンゾフラン(BFBF)を母骨格とする新規プロペラ型ヘテロアセンを構築することに成功し、その基本的な光学的・電気化学的特性を明らかとした。
測定して得られた物性値は計算科学的な予測値と良い一致を示し、当初期待した通り、シクロプロパン環が縮環した構造をとることで、芳香族性を維持したままヘテロアセン構造を曲げることに成功したことを示唆している。
得られた誘導体については全て結晶構造解析にも成功し、その構造を確認すると共に、重なり積分も算出し、高い電子移動特性も期待されることもわかった。また、得られる分子群は全てキラル分子であるが、これら生成物を光学分割する条件も見いだした。研究計画は極めて順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

得られた新規プロペラ型ヘテロアセンを用いて有機電界効果トランジスタの作成を試みたが、残念ながら、蒸着プロセスに問題があった。そこで、溶液プロセスによるデバイス作成にも取り組んでいるが、現在のところ、デバイス特性の発現には至っていない。これは膜形成の条件に問題があると考えられるので、膜形成条件を精査する。
これまでに得られている新規プロペラ型ヘテロアセンを光学分割できる条件はすでに明らかとしているので、この条件下光学分割に取り組んでいる。令和6年度は得られたエナンチオマーの円偏光特性を明らかにすると共に、結晶構造解析を行い、ラセミ体とのパッキング構造の違いを明らかとする。
また、今後は、有機電界効果トランジスタとして用いるために、よりπ拡張された新規プロペラ型ヘテロアセンの合成に取り組む。π拡張する手法としては、①すでに構築したプロペラ型ヘテロアセンを修飾してπ拡張する手法と、②π拡張したヘテロアセンにカルベンを作用させてシクロプロパン化する手法の二通りの方法でアプローチする。前者については、π拡張はされるものの、シクロプロパン環が開環してしまう、という問題も発生しているので、この開環体の閉環によるπ拡張体の合成も並行しておこなう。

次年度使用額が生じた理由

成果発表として、地元で開催された学会にて発表したため、当初予定していたほどの旅費が発生しなかった。また、試薬・溶媒の価格高騰の為、実験の効率化を図り、当初予定いたよりも溶媒・試薬代を圧縮することに成功したため。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Electrochemical Synthesis of Dibenzothiophene <i>S</i>,<i>S</i>-Dioxides from Biaryl Sulfonyl Hydrazides2023

    • 著者名/発表者名
      OKUMURA Yasuyuki、SATO Eisuke、MITSUDO Koichi、SUGA Seiji
    • 雑誌名

      Electrochemistry

      巻: 91 ページ: 112007~112007

    • DOI

      10.5796/electrochemistry.23-67078

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Electrochemical Synthesis of Sultone Derivatives via Dehydrogenative C?O Bond Formation2023

    • 著者名/発表者名
      Mitsudo Koichi、Okumura Yasuyuki、Yohena Kotaro、Kurimoto Yuji、Sato Eisuke、Suga Seiji
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 25 ページ: 3476~3481

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.3c01062

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electrochemical Cross-Coupling Reactions between Arylboronic Esters and Aryllithiums Using NaBr as a Halogen Mediator2023

    • 著者名/発表者名
      Mitsudo Koichi、Suga Seiji、Shigemori Keisuke、Shibata Taro、Mandai Hiroki、Sato Eisuke
    • 雑誌名

      Synthesis

      巻: 55 ページ: 2999~3004

    • DOI

      10.1055/a-2034-9821

    • 査読あり
  • [学会発表] フロフラン及びチエノチオフェン誘導体のシクロプロパン化による[3.3.1]プロペランの合成とその物性2024

    • 著者名/発表者名
      平野 翔暉、光藤 耕一、菅 誠治
    • 学会等名
      日本化学会第104春季年会
  • [学会発表] 電気化学的なラジカル発生を鍵とする含硫黄複素環化合物の合成2024

    • 著者名/発表者名
      光藤耕一、奥村恭之、菅誠治
    • 学会等名
      電気化学会第91大会
  • [学会発表] ヘテロアセンのシクロプロパン化による[3.3.1]プロペランの合成および物性評価2023

    • 著者名/発表者名
      平野翔暉・桐畑朋佳・光藤耕一・菅 誠治
    • 学会等名
      第33回基礎有機化学討論会
  • [学会発表] N,O-二座配位ジフルオロボロン誘導体の合成およびその光学・電気化学的特性2023

    • 著者名/発表者名
      前川直登・光藤耕一・菅 誠治
    • 学会等名
      第33回基礎有機化学討論会
  • [備考] 合成プロセス化学研究室

    • URL

      http://achem.okayama-u.ac.jp/reacteng/

  • [備考] K Mitsudo website

    • URL

      https://mitsudo.net/

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公開日: 2024-12-25  

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