研究課題/領域番号 |
23K17928
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
秋根 茂久 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30323265)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 分子カプセル / かご型分子 / 金属錯体ホスト / キラリティー / 分子構造変換 / ゲスト取り込み |
研究実績の概要 |
本研究では、金属配位によりねじれながら収縮する構造のホスト分子を開発し、その構造変換をゲストの固定化に活用することを目標としている。その実現のためには、ねじれキラリティーを有するカゴ型分子の開発が不可欠であり、そのためには、それらのカゴ型分子のキラリティーのコントロールと分子内部の空孔におけるゲスト認識能の評価を行う必要がある。 本年度は、三重らせん構造を有するキラルなメタロクリプタンド分子の開発に成功した。この分子には、炭素中心キラリティーに基づくキラル補助基を導入しているので、らせんキラリティー(右巻き・左巻き)の比率に差が生じる。NMRスペクトルやCDスペクトルの検討により、その比率が一方に偏っていることが明らかとなった。また、このキラルメタロクリプタンドは、アルカリ金属イオンなどのゲストを認識できることが明らかとなった。特に、カリウムイオンやセシウムイオンを認識した場合にねじれキラリティーの向きが逆転する特異な現象を見出した。興味深いことに、そのときの平衡化の速度がゲスト金属の種類によって大きく異なっていた。カリウムイオンを認識した場合の左巻きから右巻きへの変換は10秒程度と速やかであったが、セシウムイオンを認識した場合には、変換には数時間を要し、両者の速度には約1000倍の違いが見られた。このように、ゲストの種類によってねじれの変化の速度を変えることができる新規な分子システムの構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の遂行の過程で、当初想定していなかった成果として、ゲスト認識に伴ってかご型分子のねじれが連動して変化し、その速度を変えることができる新しい分子構造変換システムの開発に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、金属配位によりねじれながら収縮する構造のホスト分子の開発を進め、そのねじれキラリティーの変換とゲスト認識能の評価を進める。また、得られらホスト分子のゲスト出入りの速度を明らかにし、分子構造変換によるゲスト出入り速度の制御効果について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
カゴ型分子の合成が予想以上に順調に進行し、合成に関する支出等が計画より少なくなった。次年度はさらなる新規分子の合成に向けた検討に使用予定である。
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