研究課題/領域番号 |
23K17938
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐野 航季 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (20845763)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 配向構造 / ゲル-ゲル界面 / 力学的異方性 |
研究実績の概要 |
異方性ハイドロゲルは生体に近い組成や構造を有することから、医療材料やソフトロボットなどへの応用が期待されている。今までに多くの異方性ゲルが合成されてきたが、その設計戦略は「バルク(物質内部)」のデザインが主である。本研究では、「バルク」と相補的な概念である「界面」に着目し、特にゲル-ゲル界面を戦略的に利用することで多様な異方性ゲルの構築および機能開拓を目指す。 本研究のハイドロゲルは主に、アクリル系モノマー・架橋剤・重合開始剤などを混合した水溶液を用いたフリーラジカル重合によって作製している。ここで、多段階のゲル作製プロセスを行うことによって、ハイドロゲル中にゲル-ゲル界面を導入することができる。本年度はまず、光学顕微鏡・偏光顕微鏡・蛍光顕微鏡・走査型電子顕微鏡などの各種顕微鏡を利用して、ハイドロゲルの内部におけるゲル-ゲル界面を多面的に観察することで、ゲル内部のポリマーネットワークの構造解析を行なった。その結果、ゲル-ゲル界面近傍の微小領域においてポリマーネットワークが自発的に局所配向していることが明らかになった。次に、ゲル-ゲル界面におけるポリマーネットワークの配向構造形成のメカニズム解明を目指した。ハイドロゲル作製における複数のパラメータを変化させ、各種顕微鏡によって内部構造の経時観察を行なったところ、局所配向構造の形成を説明することができる有力なメカニズムを提案することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ゲル-ゲル界面におけるポリマーネットワークの構造解析と配向構造形成のメカニズム解明に成功している。当初予定していたよりも迅速に配向構造形成のメカニズム解明に成功しており、その他の研究計画も順調に進んでいることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ハイドロゲルの組成の影響も精査することで本戦略の適用可能性について探索する。また、ゲル-ゲル界面におけるポリマーネットワークの配向構造のより詳細な解析と配向制御を目指すとともに、配向構造と各種物性の関係性も明らかにする。さらに、得られた異方性ハイドロゲルの機能探索も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも迅速に配向構造形成のメカニズム解明が可能となったため、ゲル作製用の試薬や構造解析用の消耗品などの必要量が減り、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせることで、ハイドロゲルへの機能性付与のための試薬や更なる構造解析・機能探索のための各種装置の購入などに充てる予定である。
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