研究課題/領域番号 |
23K17945
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
井本 裕顕 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (40744264)
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研究分担者 |
岡 弘樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (50907376)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 有機元素化学 / 高分子材料 / 触媒化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヘテロ元素を高分子骨格へと導入し、優れた高分子系光触媒を開発することを目的とする。この目的を達成するためには、重原子効果による長寿命な三重項励起子の効率的な生成と、有機分子としての安定性を同時に獲得することのできる元素を見出す必要がある。また、好適な有機分子骨格の選定も必須である。 2023年度は、元素間での比較を行うために、有機分子骨格をジチエノヘテロールに固定して元素のスクリーニングを行った。既に我々が萌芽的な成果を得ているヒ素を中心として、ゲルマニウム・アンチモンの誘導体を合成してジチエノヘテロールモノマーを合成した。その結果、ゲルマニウムではヒ素を凌ぐ高効率の一重項酸素発生能を示すことが明らかになった。一方で、アンチモンをもつジチエノスチボールにおいては、モノマーが非常に不安定で、様々な条件を試みたものの高分子を得ることはできなかった。第4周期のゲルマニウム・ヒ素は、一重項酸素存在下でも安定であるのに対して、第5周期になることで安定性が大幅に低下したと考えられる。次に、コモノマーをスクリーニングすることで、より高効率で一重項酸素発生が可能となる系を見出した。 さらに、優れた結果を得ているヒ素を材料として用いる際の懸念として、使用後のヒ素含有分子を廃棄する際の環境影響が挙げられる。そこで、アルソール骨格からのヒ素のケミカルリサイクルプロセスについても検討した。結果として、紫外光照射によって分解・元素回収可能な共役系を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、我々が既に一重項酸素発生の光触媒機能において萌芽的成果を得ている系を基礎として、分子構造のスクリーニングを行った。結果として、元素間の比較とコモノマーの最適化を行うことができ、顕著な差異を認めるに至った。特に、本研究においては、「どの元素を用いることで光触媒機能と安定性が両立できるか」という問いが最も重要である。これに対して、既にいくつかの元素を比較検討することで、第4周期元素(ゲルマニウム・ヒ素)が第5周期元素(アンチモン)に比して大きくアドバンテージがあることを見出すことができた。すなわち、後周期元素になることで炭素との結合が不安定化し、アンチモンでは高分子を得ることすら困難であり、第4周期元素を用いる合理性が明らかとなった。また、コモノマーによって光触媒機能が大きく変化することも分かった。これにより、最終年度である2024年度に最適化された分子構造によって様々な反応(酸素の還元や水の酸化)に対する基盤づくりに成功したといえる。また、アルソール骨格からヒ素を回収するために、ケミカルリサイクルプロセスを検討した。その結果、特定の光照射条件でヒ素を90%以上の効率で回収して、アルソールへと変換しなせることを実証した。以上、本研究は滞りなく進んでおり、2023年度の進捗状況を「(2)おおむね順調に進展している」とした次第である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、前年度にえた分子構造に関する知見を活かして、光触媒性能評価を展開する。また、評価結果を分子構造にフィードバックすることで、更なる構造の最適化を進める。具体的には、酸素の還元による過酸化水素の生成、および水の還元による水素の生成に、開発した高分子光(電極)触媒を適用する。触媒性能評価として、変換効率計測と耐久性試験を行い、最適な高分子光(電極)触媒を見出す。さらに、分子構造間、特に元素間の比較で明らかになった知見を整理し、分子設計を見直して再評価する。これによって、研究期間終了時には優れた高分子系光触媒を実現する。
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