研究課題/領域番号 |
23K17948
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
辨天 宏明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60422995)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 共役高分子 |
研究実績の概要 |
本研究では有機半導体材料の電子機能発現にとって共通の要素素過程である電荷輸送を対象とし、薄膜材料の局所機能計測が可能な電流計測原子間力顕微鏡を用いて、有機半導体、特に高分子半導体薄膜でのナノスケール導電特性を三次元で可視化する計測・解析手法を確立する。 そこで本年度はまず、測定に適した高分子半導体材料の選定と薄膜モデル試料の作製を検討した。具体的には相分離の構造形成によって膜内での電荷輸送特性が数百ナノメートルスケールで不均一となる高分子半導体ブレンド薄膜の作製を進めた。混合する材料の相溶性がある程度高い場合は膜内での電流分布が均一になることから、接触角測定等から混合材料の相溶性を評価しながら、ブレンドに適切な高分子半導体の組合せを検討した。また、表面形態観測の結果からはブレンド膜の相分離サイズが適当であっても、界面や膜表面に片方の材料が偏析することで電流検出が困難になる場合があることが判明した。また、原子間力顕微鏡(AFM)の探針にコートする金属の仕事関数の違いによって、半導体薄膜に電荷注入ができず電流検出が困難になることが判明した。そのため、高分子半導体の価電子帯エネルギー準位を大気中光電子分光測定により決定し、AFM探針の金属の仕事関数と比較しながら、最適な探針の選定を進めた。ブレンド膜での電荷輸送特性の検出を妨げる諸問題の解決を進めた結果、測定に適した高分子半導体ブレンド薄膜の作製と電流計測に係る諸条件の最適化をほぼ完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に照らしておおむね順調に進んでいるものの、時間的制約から作製した薄膜試料の断面出しを検討するまではいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、今後は、支持電極基板上に製膜した高分子半導体のブレンド薄膜の断面出しをおこなう。さらに、電流計測原子間力顕微鏡を用いた断面電流像の計測を行い、同一試料に対して表面電流像と断面電流像の取得を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度に予定していた試料固定用ステージ等の購入を次年度に持ち越すことになったために次年度使用額が生じた。次年度は、今回、翌年度分として請求した助成金と合わせて、試料固定用ステージ等を購入し計測を進める。
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