研究課題/領域番号 |
23K17957
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60423240)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 光電気化学キャパシタ / 酸化チタン / 酸化マンガン / 光合成関連物質 / ナトリウムイオン吸着 |
研究実績の概要 |
光電気化学キャパシタは,光電変換により発電を行う太陽電池と低い充電電圧でも動作可能な電気化学キャパシタを組み合わせた新しいデバイスである.これまでにわれわれは,安価な光電変換材料であるTiO2と,Na+を吸着する電極材料であるMnO2を一体化させた複合電極において光照射に基づく充放電反応が発現することを見出してきた.また,クロロフィル等の光合成関連物質がTiO2の光電変換機能を促進する興味深い知見も確認しつつある.そこで,本研究課題では,クロロフィルaとクロロフィルbで被覆したTiO2を用いると吸収光の波長域が広がり,Na+吸着の駆動力となる光起電力が増大する新規メカニズムを考案した.本年度は,クロロフィルaおよびbで被覆したTiO2をMnO2と複合化させた電極を作製し光電気化学キャパシタ特性の評価を行った.また,TiO2は負極用の光電変換材料であるが,正極用の酸化物材料の探索も行った. 市販のルチル型TiO2を用いてクロロフィル被覆処理を行った.クロロフィルaのみ,もしくは,クロロフィルbのみで被覆した場合の電極と比較して,両方で被覆したものでは光起電力が増大することを確認した.これは,クロロフィルaとbの両方で被覆すると吸収光の波長域が広がり,期待通り,より多くの光励起電子が生成したためと推察される.また,2種類のクロロフィルで被覆したTiO2を用いた複合電極は,最も高い放電容量を示すことが確かめられた.これは,光起電力が増大したことでMnO2へ受け渡される電子の数が増え,その表面に吸着するNa+の量が増加したためと推察される. 正極用の光電変換材料として,種々の酸化物材料の検討を行った.その結果,LaFeO3が特に有望な光電変換特性を示すことを確認した.また,CuやZnなどの不純物元素のドープによりその特性が向上することも見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クロロフィルaおよびbで被覆することで,TiO2の光電変換機能が向上するのみならず,光電気化学キャパシタとしての性能(Na吸着量)を改善できることを新たに見出すことができたため.自然界の光合成と同様に,クロロフィルaとbの両方を用いることで性能改善を達成できた知見は,化学とバイオの分野が融合した成果としても意義深いものである.また,負極のみならず,正極についても有望な材料を見つけることができ,光電気化学キャパシタの研究開発を新たなステージに運ぶことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
光電気化学キャパシタの負極材料については,クロロフィルaとbの併用により,光吸収波長領域を広げることができたが,光電変換特性をより一層向上させるために,他の波長領域を吸収できる物質との複合化を検討する.一方,正極材料については,LaFeO3の調製方法や合成条件を変更することで,さらなる性能改善を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画当初は,光電変換材料となる酸化チタンを水熱合成装置等を用いて調製する予定であったが,予備検討として行った市販品の酸化チタンを用いた場合において優れた性能が得られることを確認できたことから,水熱合成装置の設置導入は保留し,市販品酸化チタンを用いた検討を進めることにしたため.繰り越した研究費は,次年度の実験で必要となる高額な消耗品等に使用する予定である.
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