研究課題/領域番号 |
23K17960
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
橋詰 峰雄 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (40333330)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | セラミックス合成 / 結晶成長制御 / 水超薄層 / ヒドロキシアパタイト |
研究実績の概要 |
本研究では、材料表面の極めて薄い水の吸着層(「水超薄層」と呼ぶ)に注目し、材料表面に形成した水超薄層のマイクロパターンの水系セラミックス合成におけるナノ反応場としての特徴を、ヒドロキシアパタイトなどの異方的な結晶成長が可能なリン酸カルシウムの生成反応を例として実験的に検証する。 本年度はまず、水超薄層を形成するための環境として水飽和有機溶媒を用いることとし、そこでのリン酸カルシウム合成について検討した。具体的には塩化カルシウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液をそれぞれ飽和させた有機溶媒(クロロホルムまたは酢酸エチル)を調製し、それらを混合することで、低含水環境でのリン酸カルシウム合成を行い、生成物のキャラクタリゼーションを行った。通常のリン酸カルシウム合成、すなわち塩化カルシウム水溶液とリン酸水素二カリウム水溶液を混合した場合には溶液のpHに応じてヒドロキシアパタイトなど主として生成するリン酸カルシウム種が制御できるのに対し、水飽和有機溶媒として両者を混合した場合は、生成した析出物は複数の微視的形態を示した。すなわち水溶液中の反応とは異なり、単一のリン酸カルシウム種の生成には至らない可能性を示唆する結果を得た。 また、パターン化した試料の参照として、ガラス基板表面全面に対し、低含水溶液系でのリン酸カルシウム析出について検討した。具体的には基板を上記二種の水飽和有機溶媒に交互に浸漬することで、親水的な基板表面への溶液からのイオンの吸着を駆動力としたリン酸カルシウム析出について調査した。このほか水超薄層マイクロパターンの作製に必要な光照射装置(キセノン光源)とフォトマスクを選定、購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水超薄層マイクロパターンの作製について、研究立案の段階ではインクジェット装置を用いることとしていたが、装置の仕様の詳細を調査したところ酸やアルカリ溶液の使用が難しく、本研究で想定していた使用方法を実現することができないことが判明した。そこで次候補であった光照射装置(キセノン光源)とフォトマスクを組み合わせる手法を採用することし、その機種選定やパターン作製および購入に時間を要してしまった。一方で上述の様にパターン化した表面に対する検討の準備段階として、低含水環境でのリン酸カルシウム析出について基礎的な知見が得られた。以上より次年度以降の計画に速やかに取りかかることができる環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず購入した光照射装置(キセノン光源)とフォトマスクを利用し、石英基板等に形成させたシランカップリング剤などによる有機被膜を位置選択的に光分解し、親水的領域としたマイクロパターンの作製を行う。それら処理基板を低含水有機溶媒に浸漬することで、系内の微量の水が基板表面の親水的領域に濃縮し、水超薄層マイクロパターンが作製できると期待される。設計通り水超薄層のマイクロパターンが形成できていることを種々の手法により確認する。そしてこの作製した基板を用い、本年度の検討と同様にリン酸カルシウムの析出について検討を進め、水超薄層マイクロパターンの反応場としての特徴を解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の交換部品など急な消耗品の出費に備えて一定額を年度末まで残しておき、結局未使用となったため。次年度繰越額分はガラス器具など恒常的な消耗品の購入に充てる。
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