研究課題/領域番号 |
23K17963
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
竹内 恒博 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293655)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 熱電発電 / 複合材料効果 / 銀カルコゲナイド / 銅カルコゲナイド / 巨大出力因子 |
研究実績の概要 |
本研究では,研究代表者が近年Cu2Seで観測した「巨大ゼーベック係数と金属伝導の両立を可能とする複合材料効果」の物理的機構を解明し,この効果を利用して,極めて高い変換効率で発電可能であること証明するとともに,実用的素子の作製により,熱電発電技術にブレークスルーを生み出すことを目的にしている. 2023年度に実施した研究では,Agサイトを微量のCuで部分置換することで,Ag2Sで観測される巨大な無次元性能指数が発現する温度領域(400-440K)を,水の沸点を含む(370K-410K)にまで低下させることに成功した.この成果により,水を作動流体とする熱交換器へのAg2S熱電材料で構成される熱電発電素子の適用が期待できるようになった.また,Ag2Sから直接的に発電ができることも実験的に確認した. 単一の材料で相変態を利用する場合には,応用への制約が大きいことから,絶縁体的材料と金属適材量からなる複合材料を人工的に作成し、同様の効果が得られるか調査を実施した.その結果,Ag2SやCu2Seで確認したほど大きくはないものの,ZTの増大を観測した.このことから,動作温度領域をさらに広げることができると判断した. さらに,絶縁体的基板上に非晶質金属酸化物を蒸着した膜において,ZT=6 を観測した.この効果もまた,絶縁体と金属相の複合材料効果であると考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に行った研究では,巨大な無次元性能指数を生み出す複合材料効果について,その発現機構を考察し,その結果を用いて複数の材料系に対して複合材料効果の発現を調べている.材料を作製し,それらの熱電物性を測定したところ,Cu2SeやAg2Sにて観測した複合材料効果を観測することに成功した.Cu2SeやAg2Sの場合,相変態を利用して材料内に高温相と低温相を共存させるが,この構造を人工的に作り出せることが明らかになったことから,素子の設計の自由度が著しく増大した. また,すでに大きなZTが得られることを報告しているAg2Sについては,Agサイトを微量のCuで部分置換することで,Ag2Sで観測される巨大な無次元性能指数が発現する温度領域(400-440K)を,水の沸点を含む(370K-410K)にまで低下させることに成功し,この成果により,水を作動流体とする熱交換器へのAg2S熱電材料で構成される熱電発電素子の適用が期待できるようになった. 同様に,Ag2Sから直接的に発電ができることも実験的に確認した. 上述したように,研究は計画通り順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には人工的に作製した複合材料において,より大きな熱電無次元性能指数ZTが得られることを実証し,素子の試作まで行えると考えている. 巨大な熱電無次元性能指数ZTを得るための条件が明らかになりつつあることから,それらの完全な解明を目指した研究を展開する.また,得られる知見を最大限に利用することで,無害で安価な材料系に於て,巨大な熱電無次元性能指数ZTを観測できると考えている.
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