研究課題/領域番号 |
23K17965
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
保田 諭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 水素同位体 / 重水 / 電解 / 二次元薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、二次元薄膜の量子トンネル効果を利用した高い水素同位体分離能を有する水電解デバイスを新しく構築し、その基礎的動作を実証することを目的とする。今年度は、二次元薄膜と電極触媒のヘテロ電極の構築と膜電極集合体の作製を行った。陽極には酸化イリジウム微粒子と二次元薄膜であるボロンナイトライドを、電解質膜にはNafion膜、陰極に白金微粒子担持カーボンからなる膜電極集合体の作製を行った。陰極の電極触媒をNafion膜に転写したのち、その背面に転写・エッチングプロセスによってボロンナイトライドをNafion膜に転写した。その後、酸化イリジウム微粒子をコートしたTi/Ptメッシュをボロンナイトライドに接触させることで水電解用の膜電極集合体を作製した。また、比較試料として、陽極には酸化イリジウム微粒子が、電解質膜にはNafion膜、陰極には白金微粒子担持カーボンからなる、一般的な水電解用の膜電極集合体も作製した。これら膜電極集合体を用いて水電解による水素同位体分離能の評価を行った。それぞれの膜電極集合体について、水電解用セルに組み込み、軽水と重水の混合水溶液を陽極にフローして電解、陰極で生成した水素同位体ガスを質量ガス分析により検証した。その結果、一般的な水電解用の膜電極集合体と比べ、ボロンナイトライドを含む膜電極集合体の方が、水素同位体分離能が最大で1.4倍程度、向上するのを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初計画どおりに二次元薄膜と電極触媒のヘテロ電極の構築と膜電極集合体を作製し、膜電極集合体を用いて水電解による水素同位体分離能の評価を行った結果、一般的な水電解用の膜電極集合体と比べ、ボロンナイトライドを含む膜電極集合体の方が、水素同位体分離能が最大で1.4倍程度、向上することが確認できたため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
分離能の向上が確認できたが、分離能のばらつきが多く最大でも従来触媒の1.4倍程度にとどまっているのが課題となっている。現状では、酸化イリジウム微粒子とボロンナイトライドの接触状況が悪いことや、ボロンナイトライド膜の破れなどが原因であると考えられる。今後は、この界面形成をより改善していくだけでなく、他の二次元薄膜材料と電極触媒とのヘテロ電極の構築と利用による、さらなる分離能の向上を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、おおむね研究が順調に進んだため、消耗品である材料の購入を当初計画よりも抑えることができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、次年度に予定している消耗品購入や学会参加費等に使用する。
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備考 |
2023/06/01 新技術説明会 (オンライン, 口頭)「グラフェンを活用した水素・重水素の新規精製装置」にて発表. 2024/02/07 令和5年度 東海村新産業創出セミナー(東京, 口頭)「水素社会に向けたJAEAの挑戦 ―水素、そして重水素が創る新しい未来―」にて発表.
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