研究課題/領域番号 |
23K18003
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
竹内 純 静岡大学, 農学部, 准教授 (00776320)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | 標的タンパク質分解誘導分子 |
研究実績の概要 |
アブシシン酸(ABA)の受容体(PYL)をモデルタンパク質として,PYL分解誘導分子を設計・合成し,in vitro試験においてPYL結合活性を確認した。また,シロイヌナズナ発芽試験により,合成した化合物のABA拮抗活性を評価した。 植物内には,タンパク質切断によって露出した特定のN末端アミノ酸残基(芳香族アミノ酸や塩基性アミノ酸)を不安定化シグナル(N-degron)としてE3リガーゼが認識するタンパク質分解経路(N-degron経路)が存在する。そこで,PYLアンタゴニストであるPANHにリンカーを介してN-degronを模倣するように芳香族アミノ酸[フェニルアラニン(Phe)またはトリプトファン(Trp)]を連結したPYL分解誘導分子を設計した。この際,分解誘導に最適なリンカーの種類及び長さを検討するために,メチレン鎖(PAN-C1-Phe/PAN-C1-Trp),エチレングリコール鎖(PAN-E1-Phe),ジエチレングリコール鎖(PAN-E2-Phe)及びトリエチレングリコール鎖(PAN-E3-Phe)をリンカーとした化合物を合成した。これら化合物はいずれも,ABAによるシロイヌナズナ発芽阻害を抑制し,予想通りABA拮抗活性を示した。また,in vitro PP2C assayにおいて,PAN-E1-Phe /PAN-E2-Phe/PAN-E3-PheはPYR1およびPYL6と結合してアンタゴニストとして機能することを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,ABAの受容体PYLを任意に分解させる標的タンパク質分解誘導分子(PROteolysis TArgeting Chimera, PROTAC)を合成し,これをモデルケースとして植物PROTAC分子の有用性・実用性を検証することで,植物内タンパク質の機能を制御する新たな手法を提案することである。本年度は,その候補化合物としてPAN-E1-Phe, PAN-E2-PheおよびPAN-E3-Pheを設計・合成し,これら化合物が実際にPYLと結合してABA拮抗活性を示すことを確認したため,このまま当初計画に沿って研究を推進していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
合成した化合物(PAN-E1-Phe, PAN-E2-PheおよびPAN-E3-Phe)がPYLタンパク質を分解誘導するかどうかを検証するための実験を行う。GSTまたはHA等の検出タグ融合PYLを発現させた遺伝子組換えシロイヌナズナを作製し,上記化合物を処理した際にPYLタンパク質量が減少させるか否かをウェスタンブロッティングによって検証する。 また,より低濃度で機能するPYL分解誘導分子の開発を目的に,PANHよりも強力なPYLアンタゴニストであるantagactinをリード化合物として,エチレングリコールリ鎖を介してN-degronを模倣するアミノ酸残基を導入した化合物の合成も進める。
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