研究課題/領域番号 |
23K18004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (70207728)
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研究分担者 |
吉岡 靖雄 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授(常勤) (00392308)
樋野 展正 大阪大学, 大学院薬学研究科, 講師 (90469916)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | タンパク質医薬品 / 人工アミノ酸 / コバレントドラッグ / 新型コロナ / ACE2-Fc |
研究実績の概要 |
低分子型コバレント・ドラッグは、標的タンパク質と特異的に共有結合を形成し、その機能を不可逆的に阻害する新規創薬モダリティとして注目を集めている。本研究では、共有結合性を持つ人工アミノ酸をタンパク質製剤の適切な部位に導入することで、標的に対して特異的かつ強固に結合する「コバレント・プロテイン・ドラッグ」を新規に設計・創出することを目指す。人工アミノ酸のひとつであるフルオロ硫酸チロシン(FSY)は、標的タンパク質表面に導入すると、相互作用するタンパク質表面の求核性アミノ酸が近接して存在する場合にのみ特異的に共有結合を形成する。そこで今年度は、SARS-CoV-2と不可逆的に結合して不活性化するタンパク質製剤の開発を見据え、SARS-CoV-2のデコイ受容体であるACE2-Fcに対してFSYを導入し、コバレント・プロテイン・ドラッグ化することを試みた。まず、SARS-CoV-2表面に存在するSpikeタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)とヒトACE2ちの共結晶構造からFSY導入に適した複数の部位をデザインした。これらの部位にFSYを導入したACE2-FcとRBDをそれぞれ精製し、in vitroで混合したところ、実際に両者の間で効率よく共有結合が形成されることを確認した。この反応は50%血清存在下でも特異的に進行したことから、将来的な生体への応用も可能であることが示唆された。また、RBD表面に存在するアミノ酸残基を置換した変異体を用いた解析から、FSYの導入箇所を変更することで、RBDの異なるアミノ酸残基を共有結合の標的とできることが示された。この結果は、様々な変異ウイルスを共有結合で捕捉するACE2-Fc変異体ライブラリの作製が可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度にFSY導入ACE2-Fcの大量合成を行う計画であったが、使用を予定していた試薬の供給に時間を要し、計画に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、293細胞浮遊培養系を用いてFSY導入型ACE2-Fc変異体の大量合成を行い、得られた変異体とRBDおよび全長Spikeタンパク質との共有結合を確認する。次に、FSY導入型ACE2-Fc変異体の、SARS-CoV-2原初株および変異株に由来するSpikeタンパク質を発現するシュードウイルスに対する感染阻害能について検証する。また、上記検討でFSY導入型ACE2-Fc変異体の大量合成に成功した場合には、その血中安定性や特に免疫原性に関するデータの収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度中にFSY導入ACE2-Fcの大量合成に必要な培養機器、試薬、消耗品類の購入を見送ったため、使用額に差額が生じた。2024年度にはこれらを購入し、配分される予算とともに適切に使用する。
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