研究課題/領域番号 |
23K18054
|
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山田 和正 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (20778401)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
キーワード | 珪質鞭毛藻 / ディクティオカ藻 / バイオシリカ / バイオミネラリゼーション |
研究実績の概要 |
単細胞真核生物の多くは細胞外被を持つ.中でもケイ酸を重合させたバイオシリカ(非晶質シリカ)から成る細胞外被は複数の系統に見られ,形態的な多様性にも富む.その生合成や形態制御の機構は,細胞学的な観点のみならず材料化学・工学的な応用の観点からも注目されている.しかしその形態形成過程は一部の限られた系統でしか理解されていない.これまでに研究されてきた生物では,細胞質中で合成された複数のパーツが細胞外で組まれ外被全体の構造が形成されるという共通の過程が示されてきた.故に完成した外被にはパーツ間の継ぎ目が確認される.一方,本研究で注目した珪質鞭毛藻が持つ外被には少なくとも外見上は継ぎ目がなく,パーツの合成と組み合わせではない別の形態形成様式を持つことが予察された. 珪質鞭毛藻の細胞を低ケイ酸濃度下で増殖させ,外被を含め一切のバイオシリカ構造を形成していない裸の細胞集団を作製した.その後,それらを高ケイ酸環境に移すことで外被の構築を再開させた.外被再構築過程を解析した結果,珪質鞭毛藻の外被は球形のバイオシリカ構造の形成に始まり,その形状変化により完成形へと発達することが示された.集束イオンビーム加工装置を備えた走査型電子顕微鏡を用いて,形成過程の各種構造の内部を観察した結果,形成初期から完成の直前までに観察される構造の内部には必ず粒子状のシリカが観察され,それらの構造の発達に伴って,シリカ粒子の粒子径が増大することが示唆された.一方,完成した骨格内部には粒子状のシリカは一切観察されなかった.シリカの柔軟性(流動性)との関連が示唆される粒子状シリカの粒径の増大と消失に関する定量的な解析を進める必要がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な課題であった骨格形成過程における構造内部のシリカ粒子の動態を概ね明らかにすることができたことに加え,今後の解析に必要でった細胞の凍結固定条件の検討を終えることができたため.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した凍結固定手法を用いて細胞の超薄切片の透過型電子顕微鏡解析を実施することで、骨格形成に関与する細胞構造の詳細について情報を得る.また,共焦点顕微鏡を用いた骨格形成過程の蛍光ライブイメージングを試み,シリカ粒子の流動性を検証すると共に、細胞内の化学的環境に関する情報の取得を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
凍結固定試料の透過型電子顕微鏡解析に時間を要したため,解析に必要な消耗品費や共同研究先への旅費について残額が生じた.当初の計画通りに2024年度に使用する計画を立てている.
|